Episode2. Falling For...?

 杏衣とは同じ高校に行きたくない。

 それが、律子が志望校を決める第一条件だった。

 杏衣は恋愛にしか意識がないように見えて、実は偏差値がそこそこの高校に通っていた。

 だから律子は、必死に勉強した。その甲斐あって、地元では指折り5つには数えられる進学校に合格することができた。

 しかし、杏衣による呪縛(少なくとも、律子はそう呼んでいる)は、そこでも続いた。

 世間は狭いとよく言う。本当にそうだと思う。

 ある日、まあまあ仲の良かったクラスメイトに呼び止められた。


「ねえ、あんたの姉ちゃんさ」


声が倹を孕んでいた。もうその時点で、嫌な予感はしていた。

 ただ、一つだけそのときの律子に言い訳が許されるとしたら、律子はその当時、既に杏衣と実質的な関わりがほとんど無かった。だから知らなかった。杏衣が、姉が、あんなことをしていたなんて。


「あんたの姉ちゃんさ、クラスの子を虐めて転校させたって、本当?」


 クラスメイトは、姉の『犠牲者』の友達の妹だった。

 だから、直接関わりはないはずなのに、正義感と自己満足を振りかざし、あまつさえ、おなじくその件には直接関わりのない律子に、怒りをぶつけた。

 相手を責めることで気分が良くなっていたはだけなんだと思う。だから律子は、おとなしく反論せずにクラスメイトの話を聞いて、正解だった。

 そのクラスメイトとは、進学先の高校が同じだった。

 一時期、油断したのが良くなかったのかもしれない。気がつくと噂は広まっていた。友達は居たけれど、それでも好奇の目は変わらなかった。

 姉を殺したい。滅びてしまえ。

 そう願ったのは、高1の冬。気になっていたクラスメイトに告白した結果、姉の噂の件で振られたとき、唐突にそう思った。

 クラスメイトには、「虐めを止めなかった親族のことなんて、信じられない」と言われて振られた。ただ、告白したということは広まらなかったのが唯一の救いだった。

 しかし、と、今振り返って思う。

 別にわざわざ願わなくてもよかったのだ。

 このとき既に、杏衣は自滅への一歩を大きく踏み出していたのだから。

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初恋に呪われた 藍沙 @Miyashita-Aisa

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