初恋に呪われた

藍沙

 何でもない日常が恋しいだなんて、どうかしてる。

 わたしがそんな、思春期の病に犯されていたころの話。

 あの頃のわたしは、身勝手でわがままで、怖いもの知らずの調子に乗った一子供、だった。はっきり言って、ガキだった。

 少し流行に乗ってるからって、友達が多いからって、自分は大人だとか、周りとは違うとか、そんなことを本気で思っていた。

 周りを傷つけて、傷つけられた。たくさん泣いたし、泣かせた。

  そして――、どんなにあがいても結局、自分と同りに“もとから” 違うことなんてないんだって気づかされた。手遅れだった。

 わたしはどうしようもないほどバカで、周りだって同じくらいにバカだった。大小関係なんて、ないのだ。もとから。


 でも、と今のわたしは思う。


 あの頃のわたしはその代わり、今のわたしには無いものを持っていたように思う。それは何かと自分に問う。

――自信?輝き?勢い?『アオハル』?


……どれも、ちがう気がする。


 全てが海の底みたいに凪いでしまった今では、それを知る術などわたしにはない。

 あの頃のわたしと今のわたしはちがう。

 その変化が、果たしてよかったのか悪かったのか、わからない。 ただ、毎日はつまらない。

 それでも、あの頃、軽べつしていた『何でもない日常』が嫌だとは思わない。


どうでもいい。


――そんな時、誰かから手紙が届いた。


 差出人も宛先も住所は書かれていなかった。だから誰かが直接、うちに投かんしていったのだろう。ただの白い小さな封筒だ。


 中には一枚、白い紙が入っていた。封筒の白とと比べると、ほのかに黄色味がかってはいたけど。

 こんなの現実にあるんだってくらい、事務的な印象の文面がそこに並んでいた。パソコンで打たれた明朝体だからそう感じるのかもしれない。


 そこにはたった一文、こんなことが書かれていた。


『初恋の人の秘密、知りたくありませんか』

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