第3話 チートジョブ付き異世界転生

「もう1度、最終確認させてね。『地獄は嫌だ、天国に行かせろ』というのではなく、転生をお望み。それで本当に良いのね? 間違いないわね?」


「そうだよ、何度も言わせんな! そもそも、オレは日本どころか世界でもトップクラスの才能もってたのに、他のヤツらがバカすぎてそれに気づかなかったから、自分にふさわしい報酬の仕事をしただけだ! そのせいで死んだ! 全部、他のヤツらがバカなせいだ! ……そうだ、もともとオレは特別な才能を持ってたんだから、チートなんて言葉は合わねえな。当然の権利としてオレの圧倒的な才能を、他のヤツらから称賛されるべきだろ! だからさっさとオレの人生をやり直させろ!!」


 明らかに筋が通ってない言い分に、普通なら困惑するようなところだが、天使は書類をデスクにおいて手を打った。


「なるほど、分かった。それがあなたの望みなら、そうしようじゃないの! ええ、そうしよう!!」


 その言葉を聞いて「よっしゃ!」とガッツポーズをする男だが、残念ながら男は物を知らな過ぎた。


 男が気がつけるとすれば、先ほど天使が地獄行きと呟いていたときだったが、天使には本来これからの行き先を決める権限がない。天国だ地獄だ転生だ、死者を面談をしたうえで行先を提言できるが、あくまで決定権はより上位の存在にある。


 それにも関わらず、転生を安請け合いした天使には、本来ならもっと疑問を持たなければいけなかったのだ。


「チート能力を付与ってのは残念だけどできないの。でも私の権限でも出来ることがある。それはずばり『あなたが考えた最強のジョブに、そのジョブに付くために必要な最低の能力を持った状態で転生させる』こと!」


「ちッ……! なんだよ。ステータスMAXで転生させろや、使えねえ」


 立場を理解していないのか、はっきり聞こえる音で舌打ちするも、それを天使は気にも留めない。なぜなら、今この瞬間での態度が悪ければ悪いほど、天使はカタルシスを強く感じることができるからだ。


職業ジョブなんて言ってるけど、簡単に言えば神が認定する資格のようなものよ。例えば戦士になるには現地基準で攻撃力の数値が300以上必要。あんたのいた世界でも戦争はあるし、その中で手足を失くした軍人の姿を映像で見たことくらいあるでしょう? それがあら不思議、戦士のジョブに就いてれば、片足でろくに踏ん張れない状況でも、明確な意思を持って放った攻撃には、戦士の神が300の攻撃を保証してくれる」


「なるほど。つまり最初から強えジョブに就いちまえば、バカ高いステータスで異世界に行けるってことか。それなら……そうだな、剣聖……いや待てよ、せっかく異世界に行くなら魔法が使えるといいな。それなら大魔導士……いや、攻撃も回復もできる大賢者か……いや、いっそのことメインを剣聖、サブに大賢者。これか」


「あ、一応言っとくけどジョブは1人ひとつだから。さっきも言った通り神が認定するんだもん。神って自分を信仰する相手には恩恵をもたらすけど、信仰の薄い相手や裏切った相手には容赦ないからさ、浮気みたいに複数信仰するとか両方の神の怒り買って破滅するわよ」


「んだよ、本当に使えねえ天使だな!!」


(ま、これからあんたが行くのは、神が憐れんでそんな肩入れをしたくなるくらい過酷な世界。地獄の場合、与えられる責め苦はあくまで罪を削ぎ落すためのもので、手心が加えられるけど転生先はそうはいかないわよ。せいぜい絶望の中死に戻って、私の渇きを癒してちょうだいね)


「何か言ったか?」


「いえいえ~」


 ド直球な暴言を受けてもなお、ニコニコとした表情を崩さない天使。それでも腹に据えかねたのか、ボソボソと呟いた声は男には届かなかった。


 数多の並行世界が存在する中で唯一、天使が自分の判断で魂を転生させる権限を持つ世界――サヴァイヴァリア。Survivalを語源とするその異世界は、文字通り人間や獣人、竜人などの亜人、その他にも知性無きモンスターなどが血で血を洗う生存競争を日々繰り返す世界だ。しかもその語源から分かる通り、言語体系も地球と同じで、言葉が通じるからこそ、人間種の存続のために転生者を融通して欲しいと、そちらを管理する天使から頼まれているわけだ。


 そんなサヴァイヴァリアにおいての人間の地位は恐ろしく低い。言葉も通じて、かつ万物の霊長としての地位を不動にしている地球からの転生者は、他種族との間で地位を高めることを期待されているからこそ、上位存在の決定でなくとも天使個人での転生が許可されているのだった。


「それじゃチャチャッと転生させるよー。あ、むこうに住む人間の意識乗っ取ったりとかはご法度だから、赤ん坊からじゃなくて各地に散らばる『転生の祭壇』という場所に今のままの姿で生まれ変わらせるから。就きたいジョブを頭に浮かべてねー」


 そんな転生先の事情を伝える義理も無し、天使がそう言うと、目の前にいた男は期待を表情に満たしながら、光に包まれ世界から消えていった。

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