静寂の中で、誰かが肉を食んでいる。

静かな日常の描写から始まり、じわじわと狂気が滲み出してくる。
サイコホラー×ブラックユーモアの傑作です。

冒頭の「カリッ。ガリッ」「プチッ。ピリッ」という音の描写が、耳に残り続けるこの作品、
何気ない焼肉の場面で、その音の正体が「肉を噛みちぎる音」だと判明します。
物語は一気に反転。
主人公は淡々と語り、それがかえって恐怖を際立たせます。
そして、押入れの中で静かに朽ちていくクニヒコの存在と、それを「誰か」が食べているという不穏な気配。

ラストの「ピカピカに磨いて飾っておこう」という一文が、狂気と愛情の境界線をあっさりと踏み越えてきます。
これは、愛と執着が骨になるまでの物語。
読後、ひとりで過ごすあなたの部屋の「音」が少しだけ怖くなるかもしれません。

その他のおすすめレビュー

柊野有@ひいらぎさんの他のおすすめレビュー1,286