第27話 拒絶の声

夜の公園。


ベンチに腰を下ろした私の手は、ずっと震えていた。

妊娠のことを翔太に伝えなければ──そう思うたび、喉が締めつけられる。


やがて、彼が姿を現した。

夏の終わりの風に、少し大人びた表情が揺れている。


「……どうしたんですか?急に呼び出して」

不安そうに覗き込むその眼差しに、私は深く息を吸った。


「翔太……私、あなたの子供を授かったの」

沈黙。

蝉の声すら止んだように感じた。

彼は驚いたように目を見開き、そしてゆっくりと俯いた。


「……本当なんですか」

私は小さく頷いた。

「ええ。間違いないの」

長い沈黙のあと、彼はぽつりと呟いた。


「……白石さん、やめましょう」

心臓が冷たい手で掴まれたように痛んだ。


「やめるって……どういう意味?」


「俺には……これからの人生があるんです。

大学に進んで、将来を考えて……。

だから、子供なんて……背負えない。

それに……ごめんなさい。

俺はやっぱり、彩花の方が……」


胸の奥に突き刺さる言葉。

娘の名前が出た瞬間、視界が揺れた。


「翔太……」

伸ばした手は、彼に届かなかった。


「もう、会わない方がいいと思います」

そう言って立ち上がった彼の背中を、私はただ見送るしかなかった。


夜風が頬を打ち、涙が静かに零れた。

愛した罪の果てに残ったのは、拒絶の声だけだった。

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