第21話 理性と欲望の狭間

「少し……話がしたいの」

そう言って私は翔太を呼び出した。


夕暮れの公園。

人影は少なく、蝉の声だけが響いていた。


「彩花のこと……」

切り出す声が震える。

「あなた、娘と……そういう関係になったのでしょう?」


翔太の目が大きく揺れた。

沈黙が答えのすべてだった。


「……お願い。彩花の未来を壊さないで。まだ若いんだから」

母として必死に説得するつもりだった。

けれど、私の声はかすかに揺れていた。


翔太は俯いたまま、低く呟いた。

「……でも、俺は……白石さんのことも……」


その一言で、心臓が跳ねた。

駄目だと分かっているのに、胸が熱くなる。


気づけば、私は彼の腕を掴んでいた。

「……忘れて。こんなこと」

そう言いながら、唇が近づいてしまう。


次の瞬間、互いの呼吸が重なり、理性は音を立てて崩れた。

木陰で重なり合う身体。

娘に譲るべき男を、私は再び奪ってしまった。


──母としての理性と、女としての欲望。

どちらも捨てられないまま、私は禁断の深みに足を踏み入れていた。


一方その頃、彩花は翔太との待ち合わせに胸を躍らせていた。

彼と過ごす未来だけを夢見て──母の影に気づくことなく。

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