明日は晴れますか?

pramisaーパラミシアー

1本目

私には幼馴染がいる


よく2人で朝から遊んで怪我をして


服を汚してお母さんに怒られていた



その子は同い年の私より背の低い男の子


他の男の子と違って臆病で足も遅いけど


とても優しくてビー玉のような


綺麗な目をしている



夏になると自分より背の高いひまわりが咲く


ひまわり畑で2人だけの秘密基地を作り


かくれんぼをしていた



どんなにひまわりをかき分けて奥へと進んでも


男の子にはすぐ居場所がバレるみたい


どんなに遠く隠れても


すぐに見つかった思い出しかない



その日も夕方までひまわり畑で遊んでいた



辺りが夕焼け色に染まって


そろそろ家へ帰ろうと


2人並んで歩いていた



「一華ちゃん!」



「はい!?」



急に大きな声で名前を呼ばれ


つられて大きな声で返事をしてしまう


振り返ると目の前の男の子は


顔を真っ赤にして大きな声で叫んだ



「僕と結婚してください!」



男の子手にはオシロイバナの花束が握られていた



目を固く閉ざし俯いて表情はよく見えないが


耳まで真っ赤になっているのがよくわかる



その小さな手は震えて何だか


オシロイバナの花言葉そのものだと感じてしまう



そんな彼が勇気を出して


私にくれた言葉が嬉しくて


小さく笑って花束を受ける



「ありがとう


でも、私たちにはまだ早いと思うわ」



男の子は驚いたように顔を上げた



ビー玉のような目には今にもこぼれ落ちそうな


大粒の涙が溜まっている



「ごめんね‥」



男の子がまた俯き小さく


ぽつり


と呟くように言った



力なく俯いてしまった男の子の表情は


見えないが涙がボロボロと


落ちているのは見えた



そこで私は誤解を招くような


言い方をしてしまったと気づく



「ち、違うの!



まだって‥



結婚は18歳からしかできないんだって


お父さんが言ってたの



だから‥」



次の言葉がなかなか出てこない



一瞬



一瞬だったかもしれない無言の時間が


私たちにとってはずっと長く感じた



「だ‥だから、私が18歳の誕生日


このひまわり畑で


待ってるね」



耳まで赤くなっているのがわかる



これは夏の日差しで


焼けるような熱を持った肌とは違う熱さで


きっと目の前の男の子と同じ気持ちの熱だ



男の子は顔を上げたかと思うと


やはり涙がボロボロと溢れている



「絶対、絶対だからね」



男の子は涙を手で拭いながらそう言った



「うん、忘れないでね」



「もちろんだよ」



そう言って微笑んだ男の子の瞳は


夕焼け色に照らされ


キラキラと輝いている



その瞳が何年もたった今も頭から離れないでいた







オシロイバナ‥臆病

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