第三話 ブルペンの衝撃

放課後のグラウンドに、金属バットの乾いた音が響いていた。

 ノックを終えた俺は監督・藤堂に呼び出され、ブルペンに向かうことになった。


 「如月。お前の球……一度、きちんと見せてもらおうか」


 その声には警戒と期待が混ざっていた。

 監督だけじゃない。キャプテン篠原、控え投手の水島、そして捕手の山根もブルペンへと集まってきた。



 マウンドに立ち、ボールを握りしめる。

 前世で幾度となく繰り返したはずの動作。だが今は、全てが新鮮だった。

 ――俺には“力”がある。この手で掴み直すための力が。


 「隼人、全力で来い」

 山根が構える。彼は分析眼に優れ、将来はデータ野球を志すほどの頭脳派捕手だ。


 俺はゆったりとしたモーションから腕を振り抜いた。

 サイドスロー特有の横回転を帯びた白球が、一直線にミットへ吸い込まれる。


 ――ズバァン!


 「っ……!」

 ミットが大きく揺れ、山根の目が一瞬見開かれた。


 「……球速はまだ132前後だが、回転が異常だな。伸びがある」


 山根の冷静な声が、却って衝撃を強調していた。



 二球目、三球目。

 俺はスライダーを繰り出す。手元でグイッと変化する球に、山根は思わずバランスを崩した。

 「ぐっ……! 何だ、この変化量……」


 続いてシュート。逆方向に鋭く食い込むボールが、内角ギリギリに突き刺さる。

 篠原が思わず声をあげた。

 「おいおい……一年でこんな球、投げられるのかよ!」


 ブルペン横の部員たちも次々に集まり、ざわめきが広がる。



 俺は息を整えながら最後の一球に全力を込めた。

 投じた瞬間、視界に光が走る。


 【特殊能力『キレ○』発動!】


 ボールは空気を裂くようにスライドし、山根のミットに突き刺さった。


 ――バシィン!


 ブルペン全体が静まり返った。

 監督・藤堂がしばし黙り込み、低い声でつぶやく。


 「……如月、お前は本物だな」


 心臓が高鳴った。

 この言葉を前世で一度でも聞きたかった。だが聞けなかった。

 だからこそ今世で、必ず証明する。


 ――俺は、エースになる。


現在の能力表(如月 隼人)


球速:133km/h(微成長)


コントロール:C+


スタミナ:C


変化球:スライダー4(進化!)/シュート2


特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/キレ○(実戦発動)/打たれ強さ○/逃げ球

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る