第三話 ブルペンの衝撃
放課後のグラウンドに、金属バットの乾いた音が響いていた。
ノックを終えた俺は監督・藤堂に呼び出され、ブルペンに向かうことになった。
「如月。お前の球……一度、きちんと見せてもらおうか」
その声には警戒と期待が混ざっていた。
監督だけじゃない。キャプテン篠原、控え投手の水島、そして捕手の山根もブルペンへと集まってきた。
◆
マウンドに立ち、ボールを握りしめる。
前世で幾度となく繰り返したはずの動作。だが今は、全てが新鮮だった。
――俺には“力”がある。この手で掴み直すための力が。
「隼人、全力で来い」
山根が構える。彼は分析眼に優れ、将来はデータ野球を志すほどの頭脳派捕手だ。
俺はゆったりとしたモーションから腕を振り抜いた。
サイドスロー特有の横回転を帯びた白球が、一直線にミットへ吸い込まれる。
――ズバァン!
「っ……!」
ミットが大きく揺れ、山根の目が一瞬見開かれた。
「……球速はまだ132前後だが、回転が異常だな。伸びがある」
山根の冷静な声が、却って衝撃を強調していた。
◆
二球目、三球目。
俺はスライダーを繰り出す。手元でグイッと変化する球に、山根は思わずバランスを崩した。
「ぐっ……! 何だ、この変化量……」
続いてシュート。逆方向に鋭く食い込むボールが、内角ギリギリに突き刺さる。
篠原が思わず声をあげた。
「おいおい……一年でこんな球、投げられるのかよ!」
ブルペン横の部員たちも次々に集まり、ざわめきが広がる。
◆
俺は息を整えながら最後の一球に全力を込めた。
投じた瞬間、視界に光が走る。
【特殊能力『キレ○』発動!】
ボールは空気を裂くようにスライドし、山根のミットに突き刺さった。
――バシィン!
ブルペン全体が静まり返った。
監督・藤堂がしばし黙り込み、低い声でつぶやく。
「……如月、お前は本物だな」
心臓が高鳴った。
この言葉を前世で一度でも聞きたかった。だが聞けなかった。
だからこそ今世で、必ず証明する。
――俺は、エースになる。
現在の能力表(如月 隼人)
球速:133km/h(微成長)
コントロール:C+
スタミナ:C
変化球:スライダー4(進化!)/シュート2
特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/キレ○(実戦発動)/打たれ強さ○/逃げ球
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