「もっと美味しいものを」

小さな手 小さな瘡

「もっと美味しいものを」

ジェイクは2つ星レストランのシェフとして腕を上げているが、元々はピザ屋の店員であった。そのためピザには心底うるさい。


市販の冷凍ピザは手をつけたことがない。

しかし配達ピザを担当していたこともあり、州のデリバリーを見つけては片っ端から食し、片っ端からクレームを入れた。


「唸るほど美味いピザは必ず職人の工程が想像できる。それ以外はモンキーかビーバーが溶けた脳で並べた食べカスだ」


その日もまた、『ビターネス』という新規のピザ屋に文句をつけて返す。あまりに酷い味だったので返金をせびいた。

「……ロットン地区だな。2日後だ。2日後に必ず来る。申し訳なかった。もっと美味いものを作るよ」

ジェイクは、相手の声がブタの小言のようにしか聞こえず、呆れて電話を切り、携帯をソファに放った。


その後ジェイクは、友人に最低評価をつけたビターネスについて話した。ピザのルックス、テイスト、におい、そして対応。何もかもぶち壊れていたことを。


直接住所に伺い慰謝料を払うと聞いていたが、夕方になっても来なかった。


金を受け取る気も失せていた。

今日は何を食べようか、そう思った矢先、電話が鳴った。友人からだ。


「どうした」

「今テレビ付けているか?ニュースで流れてるやつ、お前が言ってた『ビターネス』のバイクじゃないか?」


テレビの中のバイクはパトカーとカーチェイスをしていた。


「……配達したのはこいつだ」

「そこはどうでもいい!」


ロットン地区の道路。

奴は右手に拳銃を所持して走行しているのが分かる。


次第にテレビにジェイクの自宅が映る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「もっと美味しいものを」 小さな手 小さな瘡 @A_heart_arrhythmia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ