第二部 第ニ章 恵みの季節
娘の欠けた月日が、あっという間に過ぎていきました。
仕事のために何度か引越しを繰り返し、住み慣れた地域を後にし、いつの間にか
このまま一人で生きて、自分を大切に思ってくれる人に
それなのに、ある日突然でした。
ある寒い冬の、日が落ちて間もない時間帯でした。突然、
野良猫は確かに
なぜならその猫は全身が白っぽかったからです。近隣にいる野良猫は全てキジトラ猫や三毛猫で、みな柄があったのです。突然現れたこの猫には模様はないようです。
しかもこの猫のなんと懐っこいこと。
「あら、あなたどこから来たの」
声をかけると、薄汚れた灰色の猫は、初対面だというのに
これは猫の親愛の情の現れであることを、動物好きの也乃子さんはもちろん知っていました。実家にひとときだけ猫がいたこともあるのです。
猫は也乃子さんを少しも疑っていません。
これは猫好きにはたまらなく嬉しいことですが、猫にとっては危険なことでした。
小さな弱い生き物を
也乃子さんは急いで部屋へ行き、何かないか探しました。冷蔵庫に昨日の晩に残したホッケがありました。お茶漬けにでもしようかと、骨もキレイに取ってほぐしてあったので好都合です。
也乃子さんが小皿を片手に、サンダルを引っ掛け外へ戻ると、猫はあろうことか也乃子さんを追って共同玄関前まで来ていました。
そっと焼き魚を下に置くと、灰色の猫はものすごい勢いで食べてしまいました。もはや吸い込んだと表現した方がいいかもしれません。
そこで今度は共同玄関の中へ入り、魚を置いてみました。猫はズンズン入ってきて、やはり魚を吸い込みました。よし!これなら部屋まで行ける!しかし也乃子さんが共同玄関の分厚い扉を閉めると、さすがの人懐っこい猫もビックリしたようで、
またやり直しです。同じことを繰り返し、今度はゆっくりと共同玄関の扉を閉めます。そして
ふと猫はそこまで来て、ここが今までいた所とは違うことに気づきました。
さて次は水です。猫は水を少しだけ飲むと、全く
也乃子さんは本棚にしていた木箱——元々はりんごが入っていた木箱です——を倒して側面を底にすると、中に
足を投げ出してスヤスヤ寝ている猫を見て、
恐らく2〜3週間は外をうろついていたのでしょう。猫は薄汚れて、とにかく空腹です。
「あなたを洗ってあげたいけど、ひとまずは体力つけないとね」
そう也乃子さんは寝ている猫にそっと声をかけました。
突然現れたこの子はどこから来たのだろう。何があったのだろう。疑問が次から次へとわいて来ます。きっと答えはわからないままでしょう。
でも本当に猫はそこにいるのです。目をやると、
也乃子さんは明日から忙しくなるなと、嬉しい予感を胸に眠りにつきました。
こうして
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