浪漫チック
ガチャッ——。
扉を開けた瞬間、そこにいたのは——。
「ゲッ!」
「おう、生徒会の皆さんがこんな所に何の御用で〜??」
「
「まあまあ、カリカリしないでよ〜」
「何用と聞いたな。分かってるくせに」
俺は笑って手を振った。
「よっ、芽衣! 相変わらず元気そうじゃん」
「会長を気安く名前呼びなんて!」
「芽衣様を侮辱する気か!」
——伊味符
S学が誇る“学園最高傑作”にして、生徒会長。
勉強も運動も全国トップ。全校生徒から「芽衣様」と崇められる完璧超人だ。
そして俺らと同じ二年生。
「ま、まあまあ。落ち着いてくださいよ〜。それに
「……仲間を集めて浪漫派やってることは知ってるわ。それに——ここ、アプセルの規則じゃ侵入禁止エリアのはずよ?」
芽衣の目が鋭く光る。
どうやら俺らがハッキングして立入制限を解除しているのを見抜いてるらしい。
「悪さしてるわけじゃないぜ? ほら、ここにあるのは娯楽だけ! 漫画、アニメ、ゲーム……」
「それが良くないって言ってるの!」
ピシャリと放たれた芽衣の声に、空気が張り詰める。
「こ、怖いっすね……
「知らない」
「あ、
隠れて覗いてる三人が小声でひそひそ。
そんな中、俺はさらに挑発してみせた。
「わかったよ。とりあえず俺らが作った場所じゃないし、ちょっとお邪魔してるだけだ。だから帰るよ〜」
「そういう話じゃないって言ってるの!」
「それにロジーも俺も——あの時のこと、忘れたわけじゃないしさ。だから今日はお開き! はい解散!」
「あなた、芽衣様に何て口の聞き方——これだからEクラスは……」
「やめなさい。その言い方はスローガンに反するわ。全人類、平等よ」
「す、すみません芽衣様……」
「まあまあ、仲間割れはよそうぜ。芽衣は昔からそういうとこ——」
「……まあいいわ。今日のところは帰るけど——浪漫派なんて、コソコソやっててもいずれバレるわ。私たちが制御できるうちにやめれば、最悪は防げるのにね…あと、そろそろオールドタイプの学生服なんか着ないでS学の制服を着用しなさいよ。」
生徒会は踵を返し、去っていった。
「ふぅ〜危なかった! おーい、みんな出てきていいぞ〜」
「部長! あんなに煽らなくても……」
「そ、そうですよ〜! 私ほんとに怖かったんですから!」
「まあ踊留は昔からこういう性格だ。だからアプセルに『人間関係適応なし』って言われるんだよ」
「うるせーな。でもよ、曲げないんだ。自分の言葉も、自分の浪漫もな!」
「部長かっこいいっす!」
「……それ、昔流行った漫画のセリフそのまんまですよ」
「え、うそ!? 騙された!」
なんとしてもこの場所は守る。あの約束のためにも。
***
その頃、生徒会室。
「会長、なぜあんな連中にこだわるのです? 放っておいても——」
「理由なんてないわ。浪漫派なんてくだらない遊びをやめさせたいだけ。それに……あの二人は隠してる」
「何を?」
「本当の能力よ」
***
翌朝。
俺らのEクラス——AIが決めた落ちこぼれクラスにて。
「おはよ〜」
「お、不良が来たぞ〜」
「不良ってなんだよ。お前らも浪漫派になるか?」
「浪漫派って死語だろ? まあそういうとこ、お前らしいけど」
——浪漫派。
もとは数十年前、AIに反旗を翻したアーティストたちの総称だった。今では過激派の代名詞みたいに扱われている。
俺に言わせれば、AIに「好き」を決められて、それを自分の価値観だと信じ込むのが気持ち悪いだけなんだが。
「踊留! 踊留!! ビッグニュースだ!」
「なんだよロジー、朝からテンション高ぇな」
「出たんだよ!」
「何が?」
「浪漫派愛用SNS“XY”で——お化けの目撃情報!」
「
「マジか!? 放課後はゴースト捕獲だな! アジトにお化けとか最高じゃん!」
「お前ら、放課後はまっすぐ帰らないと——」
「これだから真面目君は〜」
そう、放課後の寄り道すらアプセルは許さない。いつの時代の中学生だよ、まったく。
「とりあえず、みんなに連絡しとくよ」
「お、おう……って、お前琴乃葉さんの連絡先知ってんの?」
「当たり前だろ?」
ウソだろ…浪漫
……俺、まだ聞けてないんだけど。
——続く。
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