外伝集『逆鎖国、始まります。』全国民サムライ装備で世界は攻められなくなりました

タコライス

機械仕掛けの鎧武者:個の要塞編

まえがき

 これは、一人の職人が、自らの魂に宿る「道」を見出し、世界と対峙する物語である。


 西暦2030年、春。

 兵庫県三木市。古い工房で、青年・藤林 匠ふじばやし たくみは、ただ黙々と鉄を打ち、鋼を磨いていた。

 祖父・宗一郎そういちろうのこした、ただ一つの教え。


『鎧は、道を護るものだ』


 その思想だけを胸に、彼は一体の鎧【v0.9】を創り上げた。

 それは、人を傷つけるためではなく、ただ、そこにある日常を、名もなき人々の命を、あらゆる脅威から護るためだけの「器」であった。


 記録的な豪雨が襲った嵐の夜。

 公の救助が届かぬ絶望的な状況下で、匠は自らの創り上げた鎧を纏い、たった一人、闇の中へと踏み出す。

 それは、あまりにも小さく、あまりにも無謀な、「個」の戦いの始まりだった。


 だが、その一歩が、国家という巨大な「公」の論理と交差した時、物語は動き出す。


 冷徹なリアリストである自衛官・柊 静流ひいらぎ しずるとの邂逅かいこう

「現場」という最強の壁として立ちはだかる、特殊作戦群の指揮官・田所 信二たどころ しんじとの衝突。

 そして、匠の思想(プラスサム)を「論理的欠陥(バグ)」と断じ、市場原理(ゼロサム)の刃でその理想を粉砕しようと画策する、アレクサンダー・カラスと戦略AI【プロメテウス】。


 これは、理想と現実、こころと論理が激しく火花を散らす、現代の「創世記」である。


 一人の職人が、自らの「個」の思想を守り抜き、やがて「師祖しそ」と呼ばれることになるまでの、これは、その序章に過ぎない。

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