母の味噌汁
椿原守
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妻に惚れたきっかけは、味噌汁の味。
亡くなった母と同じだった。
妻の作る味噌汁はいつも同じ味で、俺はほっとする。
一口飲むと、「ああ、結婚してよかった」といつも思うのだ。
もしかして、妻は母の生まれ変わりか? と思ったことすらある。
さすがにその考えは否定したけれど……。
キッチンに立つ妻の背中にそっと忍び寄る。後ろからぎゅっと抱きしめてみた。
「味噌汁のいい匂いがする」
肩越しに妻の手元を見た。そこにはお椀があって、ワカメのお味噌汁が入っており、お椀の隣には開封した小さな袋が二個置いてあった。
「お味噌汁ほんっと好きだよね。インスタント味噌汁でも、まるで『世界一美味い』みたいに言うんだもん。こっちとしては助かる~」
……どうやら俺の母の思い出の味は、インスタントだったらしい。
そういえば、母は料理下手だったな、と、このとき思い出したのだった。
母の味噌汁 椿原守 @tubakihara
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