4話
あれから実技試験は問題なく続き、実技試験の受験者は240人を超えていた。
試験官「次、受験番号244番三橋海斗」
クールな茶髪の青年が試験場に出てきた。
「はい」
試験「説明は聞いた通りだ。始め!」
「甲輪」
金色の頑丈そうな円盤の形をした物体を4つ生成し、自身の周囲に時計回りで回転させ四方から来る敵を倒していく。
木村「発想が単調だな」
暁仁「金氣を攻撃に使う人間は珍しいですね」
木村「武器生成や鎧として使用するのが普通だからな。あんなふうに操作して攻撃に使う奴はあまり見たことないな」
その後も次々と倒していき、その青年は5級を受けた。
「金剛鎧」
全身を鎧で覆い。餓鬼の攻撃を真正面から跳ね返し殴り飛ばした。
「烈破」
鎧の拳で衝撃波を増幅させ、餓鬼を爆散させた。
木村「まぁまぁだな」
暁仁「ですが、攻撃を受けすぎて鎧に亀裂がはいってますね」
木村「ここまでだな」
試験官「そこまで!」
「三橋海斗、実技試験合格」
木村「1級に上がれそうな人材はまだ現れないな」
暁仁「このままじゃ、全員死にますね」
木村「最近霊災が増えているからな」
暁仁「私なんてここに来て、もう3回呼び出されているんですよ。こんなに忙しいのに…」
木村「俺もだよ…」
ハク(2人とも苦労しているな)
試験官「次、受験番号276番四宮和光」
「はい!」
金髪の爽やかイケメンが試験場に出てきた
木村「おいおい、とんでもないイケメンが出てきたぞ…どうした?」
暁仁「いえ、和光という名前…何処かで聞き覚えがあるのですが…どこだったかな〜?」
試験官「始め!」
「天剣」
光輝く剣を2本生成し、敵に斬り込んでいく。
木村「二刀流か…同じ剣士としてどう見る?」
暁仁「話になりませんね」
イケメンは難なく敵を倒し、5級に突入していた。
「くっ…」
青年は6体目の狂骨で苦戦していた。
「虎光!」
光り輝く虎を召喚し、狂骨相手に時間稼ぎに移った
木村「未熟な氣をさらに増大させたな」
暁仁「恐らく、大技を使うのでしょう」
「光燐斬」
光剣を巨大化させ叩き斬る単純な術を使用し、狂骨を真っ二つにした。試験場には15m程の亀裂ができていた。
木村「威力はまぁまぁだな」
暁仁「惜しくも4級には届きませんがね」
試験官「そこまで!」
「まだやれます!」
試験官「そんなボロボロな身体で試験を受けると?」
「はい!」
試験官「気持ちは分かるが、悪いが認められない。これで試験は終了だ」
「……わかりました」
木村・暁仁「「バカだな」」
ハク(身の程をわきまえない人間よな)
暁仁「ああいった人間が仲間を危険に晒すんですよね…」
木村「霊災の修祓に失敗したら市民も巻き添えになるんだぞ…全く最近の学生ときたら…」
試験官「次、受験番号293番 六月蛍」
「はい」
黒髪ショートヘアーのメガネ美人が槍を持って試験場に現れた。
木村「見るからに真面目そうだな…」
暁仁「女性を見た目で判断すると危険ですよ」
試験官「始め」
「鳴神闘法、急急如律令」
彼女の槍と身体眩いほどの雷が迸った。
木村「戦闘式をあの歳で使うとわな…」
暁仁「しかも、古式を省略式にして運用速度を速めていますね。威力は半減しますが通常の戦闘式よりは強い力を使用できます」
木村「氣の運用は惜しいがな…」
次々と現れる敵に風穴をあけ倒していく…
木村「どうやら、戦闘式しか使えないみたいだな」
暁仁「他の術式が使えなくてもそれを補えるだけの実力がありますね。何より長物を使用する事で自分の弱点を補っていますよ彼女…たいしたものです」
ハク(あの女…中々やるなのう)
木村「こりゃあ、鬼までいくな」
暁仁「えぇ…」
彼女は予想通り赤鬼まで辿り着いたが、やはり苦戦を強いられ金棒で吹き飛ばされた。
「イヒッ、もっと…もっとよこせや〜!」
木村「とんだ戦闘狂だな…」
暁仁「氣の出力が先程の倍になりましたね」
木村「感情の昂ぶりで氣の出力が上がる特異体質か…」
「ガァーッ!」
「おらおらおらおら、まだ足りねえぞ!」
段々赤鬼が押さればめ、彼女が優勢になっていった
「死ね〜、穿鳥!」
最後は赤鬼の顔を穿ち討伐した。
木村「想像以上だな…」
暁仁「今までの受験者で実力は一番ですね」
木村「まだ余裕そうだが4級はどうかねえ…」
試験官「次は4級になるがどうする?」
「ふぅー、…やめておきます」
木村「ありゃっ」
暁仁「受けないようですね」
木村「それにしても、普段はクールだが戦闘になればあれだけ性格が変わるとは、女ってのはおっかないね〜ぇ」
暁仁「烏にも似たような槍使いがいますから気持ちは分かりますよ」
木村「へぇ〜、強いのか?」
暁仁「私が今の所、8連敗している相手ですよ」
木村「何処の怪物だそりゃあ…」
試験官「六月蛍、実技試験合格!」
その後も続出する不合格者と合格者が増えていく中、試験は最後を迎えた。
暁仁「観客席が少しづつ学生で埋まってきましたね」
木村「最後の受験者が目的だろうな…」
暁仁「そんなに有名なんですか?」
木村「陰陽師業界では一番有名な人物だ。なんてったって土御門の天才児だからな…」
暁仁「土御門…確か平安時代に天才と言わしめた安倍晴明の子孫でしたか?」
木村「15歳にして1000年に1度の天才と言わしめた少女なんだが…」
暁仁「何か問題でも?」
木村「噂では、誰とも話すことが滅多にない変わり者だとか…」
試験官「次、受験番号497番土御門紫晴」
凛とした美しい薄紫色の長髪をなびかせた少女が試験会場に現れた。
木村「あれが衰退した土御門の新たな希望と言われている女か…氣の量はそこらの1級とは比べものにならないくらい多いな」
暁仁「身体に纏っている氣の循環も中々なものです」
木村「あとは実力だな」
暁仁「えぇ…そうですね」
試験官「始め!」
「簡易式・金剛兵急急如律令」
4体の金剛の鎧兵を呼び出し、水、火、土、木の武器を生成しそれぞれに一つずつ持たせた。
「仏の御心のままに 汝の罪を許したもう 除夜の鐘が鳴り終える その時まで我の兵は休み事を知らず 祓い続ける」
4体の金剛兵を操り敵を屠っていく
木村「帝式で人形を操り、4つ同時に戦闘術式を生成し、簡易式で呼び寄せた鎧人形に持たせ戦わせているな」
暁仁「人形の動きによどみがありませんね。あれほどの高等技術を使用して、尚も余裕のようですよ」
木村「確かに天才と言われるだけのことはあるな」
その後も彼女は帝式と戦闘式を用い、5級をクリアした。
試験官「次は4級になるが引き続き受けるか?」
「えぇ…受けるわ」
試験官「それでは4級試験始め!」
四級は全部で3体、うわん、濡女と倒していき最後の1体になっていた。
アナウンス「これをクリアすれば、3級のライセンスを習得となります。大変ッ…」
アナウンスが途中で途切れ、辺りが静かになった。
木村「どうした?」
暁仁「アナウンスが途切れましたね」
試験官「ん?おかしいデバイスが反応しない」
「おい!どうなっている?」
試験官が携帯を取り出し連絡を取りはじめた。
機械室「わかりません。今機械を点検しているのですが…あっ、動きました」
アナウンス「…ッれより1級試験を開始します」
試験官「!…おい、止めろ!」
機械室「無理です!全く反応しません」
試験官「くそっ…避難だ」
試験官がその言葉を口にする前に場はパニックになっていた。
「おい…今1級って言ったか?」
「言ったな…」
「…全員ここから逃げろ〜!」
誰かの悲鳴と叫び声が聞こえる中、私達二人は席に座りながら話していた。
木村「どうする?」
暁仁「土御門さんはまだやる気みたいですし、今の所は何もしません」
木村「そうだな」
機械のエラーを起こしたおかげで本来単体で出てくるはずの化物が一気に6体出現した。
紫晴「…どうしようかしら」
紫晴の目の前には火車、雷獣、百足、グリフォン、ケルベロスと何故か海外の怪物も混じっていた。そしてこの場で最も危険なのが天井にいるあれだ。
紫晴「成龍、あれのせいで氣が乱れて術が発動できないのよね…」
紫晴が逃げることを考えている中、周りから先程まで聞こえていた悲鳴や人の声が聞こえないことに気がついた。
????「「眠れ」」
私は、その言葉とともに意識を手放した…
観客席〜
木村「ヤバいの出てきたな…ケルベロスにグリフォン海外の化物まで出てきてやがる」
暁仁「どうやら彼女、天井にいる成龍のせいで術式が使用できないみたいですよ」
木村「いけるか?」
暁仁「今の私なら1級6体は余裕です」
木村「頼んだ」
暁仁「その前に周りを黙らせましょうか…「眠れ」」
私は言霊を使用し、うるさい避難民全員眠らせた。
木村「…ははっ、どっちが化物やら」
暁仁「簡易式・白鬼」
「では、行ってまいります」
木村「あぁ、頼んだ」
私はホログラム前で眠っている土御門さんを拾いそのまま巻き添えにならない隅っこに寝かした。
暁仁「さて…「大神にこいねがう 我は魔を祓う者 汝を祓い 己を咎め今ここに楔を打つ 黒式黒炎符急急如律令」」
私は、戦闘式を使用し身体に黒炎の鎧、手には炎が漏れだした白刀を装備し距離を詰めた。
「グエ〜ッ」
グリフォンに飛ばれると面倒なので、翼を斬り落とし、札を取り出し火車の目の前に落とし、印を結んだ。
「西の海 千尋の空 海草々は 髻を濡らし 神の御業」
洪水のような大量の水が火車を呑み込み、私は印を重ね掛けして、形態変化を使用し水の中に数万水の剣の檻を生成し、そのまま串刺しにした。
「まず一体」
そのあと、飛べなくなったグリフォンに近づき、鞘に納めた刀を抜いた。
「若葉流居合・影十字」
グリフォンの身体に深い十字傷を刻み致命傷となり、そのままホログラムが消えた。
「二体目」
次は1級の中では比較的簡単な百足に札を貼付け印を結んだ。
「天照らし 国照らして 光りなす 天照大神」
高火力の炎で灰にしたが、成龍は危険と判断したのか回避したため試験会場の天井に大きな穴を作ってしまった。
暁仁「…修理費大丈夫かな…」
私は倒すことより、修理費の事を考えた。その隙に雷獣が私の背後をとるが刀で一刀両断した。
「若葉流・花車」
あとは天井にいる奴とケルベロスの2体のみ、ケルベロスは首が一つでも残っていると復活するのでどうするか考える。勿論攻撃を回避しながら…
「力技でいくか…」
「ガゥ!」
ケルベロスが噛み砕こうと近づき、成龍はこれでもかとブレスで攻撃する為、私はあらかじめ地面にばら撒いた札の上に犬を誘導し、印を結んだ。
「神々は 今津といます 風の車よ 音は轟に」
ケルベロスのしたから巨大な風の渦を発生させ上にいる成龍とかさなりあうようにぶつかる。成龍はケルベロスの炎の身体に炙られる形で風に拘束されているため苦しそうにしていた為、回避はできないだろう。
私は鞘に氣を流し込み増幅させ刀を抜いた。
「若葉流居合・黒刀不知火」
そのまま2体は斬撃に呑み込まれるように消滅した
暁仁「ふ〜う、終わりましたよ」
木村「…お疲れさん。にしてもあんた…」
そう言って最後に斬った方向を見つめた。会場は半壊寸前向こうの森林地帯まで地面に深い斬撃の跡が残っていた。
木村「やりすぎだ」
暁仁「…学長に修理費について相談しなければなりませんね…」
私は半ば諦めた顔でこのあとの事を考えるのであった。
あぁこんな世界に幸せがあるのなら @534
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