終わらない葬儀
まい(18)
これは怪談なのか分からないんですけど、話しますね。
私は部活でテニスをしていて、よくその活動の一環で学校近くの市民会館のテニスコートを借りるんです。そこは珍しくて他にもグラウンドや体育館があるので他の部活動でも使わせてもらっていました。
その日もそこで夜遅くまで練習をしていて、途中で御手洗に行ったんです。そしたらトイレ横の会議室が連なる廊下からお経を読んでる声が聞こえてきたんです。
最初はお経を読んでいるとは気付かず、誰かが電話をしているかと思ったんですね。でも耳を澄ますとはっきりとお経だと分かりました。
私は気味が悪くなって急いで練習に戻りました。その日は「きっと何かのお祭りでお経を読むための練習だろう」とそう思っていたんです。
でも違いました。練習でそこの市民会館に行く度、そのお経聞こえてくることに気づいたんです。
ある日、私はその声があまりにも気になってしまい友人2人を連れてその声の元を探そうと探検に出たんです。
誰もいない薄暗い長い廊下を、3人で歩きました。
そして声の元に辿り着いたんです。
そこは、廊下の1番奥の第1倉庫と書いてある所でした。
でも、おかしいんです。その扉の上にお葬式で使う白と黒の鯨幕が張ってあって……中から低いお経の声が聞こえてました。
私はこれ以上はダメだと思い帰ろうとしたんですが、友達の1人のAちゃんが扉を開けてしまったんです。
中には、喪服を着た人達がずらりと座っていました。
私たちには目もくれず、全員がじっと同じ方向を見つめているんです。
その先にあったのは、祭壇でも棺でもなく
――古びたラジカセとその後ろに置かれた小さな水槽でした。
ラジカセからは、私がずっと聞こえていたお経が流れていました。
水槽の中はびっしりと藻が張り付いていて真っ暗でしたが、よく見ると何か赤子のようなものが浮いてる気がしました。
……その瞬間です。
喪服姿の人たちが、一斉にこちらに振り返ったんです。
無表情で、じっと私たちを見つめていました。
私たちは悲鳴も出せずに廊下を走り、二度とあの場所へ戻ることはありませんでした。
でもその数日後――あの扉を開けたAちゃんが、市民会館近くの用水路で、溺死体となって発見されました。
体が水を吸ってパンパンに膨れ上がり、発見当時は性別すら見分けができない状態で発見されたそうです。
私はもう近寄りたくありませんが、きっと今もあの倉庫では終わらない葬儀が続いてるんだと思います。
口下手ですみません。でも本当にあったことなんです。ごめんなさいアミ。本当にごめんなさい。私が連れてったばかりに。ごめんなさい
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