第15話 パーティー
最近真壁に依存しつつある。日和も欹愛も傍に居ると痛い。なお欹愛には真壁のことがすぐにばれた。だが興味はないらしい。日和には自分から言った。
「そんなのどうでもいいから捨てないでぇ!」
そんな風に泣かれた。激しく怒ってくるなら俺だって逆切れしたりしてまだ健康的なのに。そんなものは俺たちの間にはなかった。真壁にはそういう家庭の事情は言えない。彼女とは健康的な不倫関係でいたかった。あるいは日和も欹愛も捨てて真壁と添い遂げたいなんて心のどこかでは思っていたのかもしれない。真壁と結婚したいとか考えるあたり自分も女遊びにはうぶい。
「さっきからずっと甘えてきますね?なにかあったんですか?」
裸で抱き合いながら、俺は真壁の胸に顔を埋めていた。
「話せないんだ」
「そうですか。でもいいですよ。わたしは傍に居ますからね」
警察庁の仮眠室をラブホ代わりにして俺たちは付き合いを続けていた。こういう時に上に恩を売っておいてよかったと思う。誰も俺たちを咎めたりしない。身内のなれ合い万歳である。
任務ORセックス。そんな日々は俺と真壁を急速に結び付けていたと思う。命の取り合いのあとに本質的に命を創る行為をするということはきっと命にとって良いことだからだろう。そんな折だ。
「上級国民さまの動物園に始めてきた感じだな」
「みんな税金に集るクズどもですよ。あ、これ美味しい」
俺と真壁は煙邑のおじいちゃんの開いたパーティーに招待された。都内のホテルで行われるそれに、多くの著名人たちが集まっていた。俺と真壁は端の方で飯をつついて時間を潰していた。
「君が孫を助けてくれた隊長さんだね」
「あ。ああはい。そのせつはお世話になりました」
「いやそれはこちらのセリフだよ。あんな子でもかわいい孫だ。本当にありがとう」
おじいちゃんに頭を下げられた。政権与党の重鎮に頭を下げられるとは俺も出世した者である。
「煙邑先生。うちの娘もお孫さん救出に参加していました」
煙邑の隣に赤毛に白髪交じりの男がいた。高級なスーツをぱりっと着こなしている。なにか嫌な感じを覚えた。煙邑のおじいちゃんが俺に頭を下げるのを嫌がってる感じだ。
「ほう。そうだったのか。さすがは真壁先生の御家の娘さんだ。うちのぼんくら共にも見習ってもらいたいものだ」
「いいえ。わたしはそんなたいそれたものではありません。加賀美隊長のご指導あっての物です」
真壁は謙遜している。だけど少し嬉しそうだ。だけど一瞬。赤毛の男をするどく睨んだのを俺は見逃さなかった。
「ではわたしはこれで失礼するよ。ぜひパーティーを楽しんでいてくれ」
「はい。それでは」
「司。ちゃんと各方々にご挨拶をしていきなさい」
「わかっています。お父様」
赤毛の男は去っていった。あれは真壁の父親だったのか。
「父親とうまくいってないのか?」
「あの人は嫌いです。情けない父親です」
「娘にそれを言われるのは同情するな」
「でも事実です。父は警察に入れなかったんです。あまりにも若いころの素行や思想がひどすぎて拒絶されたんですよ。そのくせ家の力を使って警察官僚の天下りを利用して事業を立ち上げて名士気取り。金はあっても品はないんです。公に尽くしてきた一族の恥です」
「そこまでいう?」
「ええ。警官だった母も呆れて家を出ました。私も大学入学で父の下から出ましたよ。私が隊長に出会うまで恋をできなかったのも父のような情けない男に身を委ねるのが嫌だったからです」
なんとも複雑な感じだ。うちよりはましだろうけど。
「国家公安委員会の委員になったのも警察に入れなかったコンプレックス故にでしょうね。情けない。父にいっそ加賀美隊長とお付き合いしていることをバラしたいですね」
「なんでさ?」
不倫をバラされても困るだけなんだけど。
「父に加賀美隊長の話をしたときに、不快感を示してました。父はミリオタなんですよ。自衛隊にも入ろうとしたけど、入れませんでした。加賀美隊長の活躍を聞かせたらもう嫉妬むき出して。面白かったです」
だから俺に頭下げた煙邑のおじいちゃんに真壁のことをむりくり紹介したのか。知らんやつに睨まれてるのもなんかしゃくである。遠くにいる真壁委員は政治家さんと談笑している。ふっと視線があった。なんとも名伏し難い顔をしている。俺はそれを見て隣にいる真壁の肩を抱いた。
「え?隊長……これじゃ父に見られちゃいます」
「いいんじゃないかな。反抗期なんだろ。パンクに生きようぜ」
そしてそのまま肩を抱いて俺は会場を出た。ホテルカウンターに向かい、そこで部屋を一つ取る。真壁は顔を赤く染めていた。だけど控えめに微笑んでいた。
「お前が欲しい」
俺は真壁の耳元で囁く。真壁は返事こそしなかったが、俺に口づけしてきた。そして俺たちは部屋にしけこむ。お互いを獣のように求め合った。
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