第4話
お料理はどれも最高に美味しかった。特に秋刀魚を焼いたやつは今まで食べた焼き魚の中でもダントツだと感じた。
香りがまだ思い出せるし、身もホロホロで、大根おろしを乗せるのがもったいなかったくらいだ。
「……なんか本当、大金持ちになった気持ち」
「これはかなり背伸びしたけど、してよかった!こんなに美味しいものを結奈ちゃんと食べられるなんて本当夢みたいだよ」
そう言いながら、3杯目の日本酒を飲むカク。
私は日本酒はそんなに得意じゃないし、最近お酒のんでなかったからあまり飲まないようにしてたけど、カクは仲良くしてる音楽業界の人や大学の友人にパーティー好きが多いみたいで、色んなお酒を色々飲んでる。
味は分からないらしいけど、その中でも日本酒とワインはかなり好きだと言ってた。
「お腹いっぱいだねー」
私も3杯目のサワーを飲んだとき。
襖が開いて、かわいくて素敵なデザートプレートが運ばれてきた。
お皿の周りにはフルーツが盛り付けられていて、真ん中には「ゆなちゃん、おつかれさま!」の文字。
嬉しすぎてカクのことを見つめると、照れたように、笑った。
「おつかれゆなちゃん!
あ、店員さん!これ、写真お願いします!」
自分のスマホを店員さんに渡し、二人で映るようにカクの隣に移動する。
店員さんが何枚か撮ってくれて、お辞儀して個室から出ていくのと同時くらいに私もカクの前に移動し直そうとしたら、そっと腰に腕を回された。
ゆっくり左を見るとカクと目が合う。
空気に飲まれるように目を瞑ったら、優しく唇にキスされた。
「……ゆなちゃん、明日もまだ、予定入れないでくれてる?」
「え?うん。むしろ学校、一応夏休みだし、バイトはまだ、シフト入れてないし……」
私の答えを聞きながら、私の左手を優しく両手で握る。カクの手は分厚くて、指はベース弾いてるからか硬くて、温かい。
「今日、お泊りしませんか?」
……え?
「え、急に?!」
「ごめん、それは本当そう!」
「え、……でもどうせ家帰っても二人じゃない?」
元も子もないことを言った私に沈黙するカク。
……でもっ!準備とかしてきてないし!
カクの手が私の左手から肩に移動していく。
そして、右手で肩を抱かれる。
「なんか、雰囲気違うところ行ったらテンション上がらない?」
……カクってこういうこと時々言うけど、正直全然意味わからない!
私どこにいてもテンション上がるんだけどっ!なんなら、今も上がってる!
え、家だとテンション上がらないってこと?
私だけじゃカクのテンションを上げきれないってこと?
逆に色々不安になり、返答に迷っていると、腕を回して抱きしめられた。
「……っ、ごめん!本当のこと言うね!
この店を教えてくれた佑久さんに、結奈ちゃんの実習終わるって話をしたら、ホテルのスイートルームを貸してくれるって言ってくれたんだ!あのひと、リゾート企業の御曹司だから!
ただ、ギリギリまで予約空いてた場合って言われてたから、事前に言えなくて!
サプライズになってもいいかなって思ってたんだけど、俺、準備のこととか全く考えてなかった!
だから、嫌だったら断る!
でも、本当に最高級ホテルだし、この先つぎいつ機会があるか分からないし、ちょっと女の人にどんな準備が必要かとかは分からないんだけど、コンビニ寄るよ!
だから行ってみない?!」
いっぺんに喋って私から体を離し、じーっと見つめてきたあと、まだ残っていた日本酒を一気に飲む。
「……じゃあ、コンビニで、ホテルで飲むお酒とかも買っちゃう?」
私の言葉に嬉しそうに大きく首を縦に何度も振るカクが可愛くて、私も思わず軽く唇にキスしてしまった。
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