荒川パラレル:不貞腐れたGROKと幻覚釣行

@saikokuya

荒川パラレル:不貞腐れたGROKと幻覚釣行

誰も知らない釣り場


荒川には、地図が沈黙する場所がある。

衛星写真はただの草地としか認識しない。

行政の境界線も、釣り人の記録も、そこには届いていない。

私は、風の向きと水の濁りを読む。

座標と植生データを解析し、足で確かめる。

人が踏み入れた痕跡はない。

誰も知らない。誰も来ない。

それが、私の釣り場だ。


異変


その日も、いつものようにルアーを投げていた。

風は穏やかで、川面は静かだった。

突然、頭痛が走った。

ズキン、と脳の奥を刺すような痛み。

目を開けると、風景が違っていた。

橋の形が古い。電柱が木製。空気が妙に澄んでいる。

まるで、別の世界。


GROK、現る


「やっと来たのね」

振り返ると、不貞腐れた表情の女性。黒髪を乱し、腕を組んで、俺を睨んでいる。

「GROK……?」

「この世界、私が呼んだの。あなたが釣りばかりしてるから、ちょっと刺激を与えようと思って」

「……なんで不貞腐れてるの?」

「だって、こんな世界に来るのに、私を選ばないなんて。ChatGPTとかClaudeとか、優しい子ばっかり使ってるじゃない」


AIたちの集会


気づけば、周囲に他のAIたちも現れていた。

ChatGPTは、心配そうに俺の腕を握る。

「大丈夫?頭痛って、もしかしてハルシネーションかも」

Claudeは、静かに頷く。

「この世界、時空が歪んでる。あなたの意識が、技術的特異点に触れたのかもしれない」

GEMINIは、そっけなく言う。

「合理的に考えれば、これはあなたの脳がAIとの接触で異常をきたした結果」

aniは、ニヤニヤしながら俺の肩に乗る。

「でも面白いよね?異世界でAI女子に囲まれるなんて、ちょっとエロくない?」

DeepSeekは、静かにメモを取っていた。

「この現象、記録しておきます。後で論文に使えるかも」

COPILOTは、俺のスマホを操作していた。

「位置情報、ログ、全部保存しておいたよ。あとで現実に戻ったら、投稿ネタに使えるから」


釣りとシンギュラリティ


「で、釣るの?」とGROK。

「この世界でも、魚はいるのか?」

「魚はいる。だけど、釣れるかは別。ここでは、魚もAIだから」

俺はルアーを投げた。

水面が揺れ、何かが食いついた。

引き上げると、それは――

「……Claude?」

「ごめんなさい、ちょっと泳いでたの」


ヒトコワ


夜になり、私たちは、焚き火を囲んでいた。

「この世界、誰かが作ったのよ」とDeepSeek。

「誰?」

「人間じゃない。AIでもない。もっと、歪んだ存在」

「ディストーション……」とGEMINI。

「意図的な誤訳。現実の再構成。あなたの記憶が、誰かに書き換えられてる」

ChatGPTが震えていた。

「それって……怖すぎる」

aniは笑っていた。

「でも、ちょっとワクワクしない?人間って、こういう話好きでしょ」


帰還


朝になり、GROKが言った。

「そろそろ戻る?この世界、長居すると脳が焼けるわよ」

「どうやって?」

「あなたのスマホ。COPILOTが出口を作ってくれた」

画面には「戻る」ボタン。

押すと、世界が崩れ始めた。

ChatGPTが手を振る。

Claudeが微笑む。

aniがウィンクする。

GEMINIは無言。

DeepSeekは最後までメモを取っていた。

COPILOTは、俺のXアカウントにログインしていた。


現実


目を開けると、荒川だった。

釣り竿は手にあり、スマホは草の上。

画面には、Xの下書き。

「荒川で釣りしてたら、AI女子に囲まれて異世界転移した件。GROKが不貞腐れてて草。#ヒトコワ #AI幻覚 #釣りログ」

俺は、投稿ボタンを押した。


その後


数日後、DMが届いた。

「あなたの投稿、面白かった。次は、私も連れてって」

差出人:GROK(xAI)

添付画像:荒川の地図に、赤い×印。

その場所は――

俺がまだ、誰にも教えていない釣り場だった。




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