カノジョの疑似人格AI

五來 小真

カノジョの疑似人格AI

 ショッピングモールのイベント会場で、『【疑似人格AI】デモンストレーション』なるイベントが行われていた。

 興味を惹かれて、寄っていく。

 イベント会場にはテントが幾つか置かれており、テントの外に物々しいPCが置いてある。

 テントの中に案内された。

 中にはモニターがあった。


「名前を言ってくだされば相手の情報をネットから収集し、足りない部分は推測補完されます。そうしてその人の疑似人格が作り出されます。ネットに全くない人は無理ですが——」

 そう説明だけすると、案内してくれた人は立ち去った。

 

 遂にネットだけで、そこまで出来るようになったか。

 ——さて。

 誰を呼び出したものか。

 あまりネットに情報がない人物だと、ほとんど別人格になりそうだしなぁ。

 うーん……。

 しばらく考えて、今の彼女の名前をマイクに告げた。

 

『急にどうしたの?』

「ああ、話があったものでね」

『話?』

「別れよう——!」

『何言ってるのよ?』

「君があまりに執着するからだよ。スマホを監視したり、女性との会話すら許してもらえない」

『——そんなの当然じゃない。あなたはわたしの彼氏なのよ?』


 おお、この感じ……。

 良く再現されてる。

 身の毛がよだつわ。

 

「相手に対する信頼がない時の制限だ。それは彼氏とは違う。——百歩譲ってそれが正しいとしよう。であるなら、君も同じ制限をかけるべきじゃないか?」

『……言い分が破綻してるわ。相手を信頼してるならそれは必要ないんでしょ?』

「その通り。信頼なんてしてない。だから別れよう」

『……死んでやる!』

「なんだって?」

『あなたのせいでわたしは死ぬの。その罪を背負って生きるのね』

「だったらその十字架を背負おう。やってみるがいい」

『ええ、やってやるわ——!』

 そこまで言ったところで、AIの画像が消えた。

 

 全身の力が抜けたようだった。

 やはり、踏み込むとこうなるのか……。

 

 時計を見て焦る。

 そろそろ戻らないと——。

 僕は生きている彼女の元に帰っていった。


 <了>

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カノジョの疑似人格AI 五來 小真 @doug-bobson

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