朝に見る星

@kimiaki3

第1話

 気がつくと私は映画館の中にいた。真っ暗で、スクリーンにはつまらない映画が流れてる。周りにはだれもいない。

 ひんやりしてきた。なんでこんな映画を見てるんだろう。よく分からない、そもそも何故こんなところにいるのか、分からない。

 

 彼女は薄暗い廊下を歩き面会室を訪れる。靴音に緊張を感じる。ドアを開けると彼はいて、優しげな顔で出迎える。

 「いらっしゃいませ。」

 彼は唯々嬉しそうに笑った。彼女はじっと彼を見つめてみる。私は何を感じているのか確かめてみたかったのだ。なんで私はここへ来たんだろう。

 「約束通り来ました、どうぞなんでも語ってください。」

 彼女は努めて平静に聞こえる様に言葉を吐いた。それに応えるように、彼は益々ニッコリと微笑み、その目は艶やかなまでに曲線を描き美しく光っていた。

 「まぁ、慌てないで暑かったでしょう?コレでも飲んでください。」

 彼は傍らから缶コーヒーを数本取り出すとテーブルに並べた。彼女は、ぼんやりと彼が缶を並べるのを見ている、何本も缶を並べる彼のしなやかな手とその所作を。無造作に1本を選び彼女は口をつけた。

 「例えばね、どうして君は今、その缶を選んだんだと思います?最近僕はそんな事ばかり考えてしまうんです、聞いて欲しい話とはまぁ、そんな話です。」

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