不気味で異様な美学、そして不可解でありながらもどこか理にかなった世界観、少女たちの描写における不安定な存在感、日常と非日常が交錯する感覚がどこか夢野久作的なそれを彷彿とさせる。とくに、第一首「竜胆を咥える少女の遺言は 『明日の食事は黒パンが良い』」では、竜胆という美しい花が少女の口に含まれ、その遺言が食事という日常的なものに結びつくことで、死と生、現実と非現実が交錯する。竜胆は毒を含むこともある花であり、その無言の象徴性が暗示するのは、死の予兆なのか、あるいは夢野久作の作品にしばしば現れる「異界への入口」とも重なりうる。