1「あまがみのみこと」激闘の日々「精霊の召喚」

ノープシトルスの星その片隅に澄んだ風に抱かれ豊かな湖水と清流の息吹が満ちる風光明媚にして侘び寂びを湛えた湖畔の小さな村で一人の少女

彼女の名は「アマガミ」が暮らしていた少女は生まれつき水や風といった自然の精霊たちと心を通わせる能力を持ち

その力を使って漁師として漁の手伝いをして働いていた湖のほとりに立てば爽風が頬を撫でる

「今日も……たくさん魚が獲れたね……」

「うん……いい日だね……」

風の精霊「ナッシュ」がそよ風に乗って囁く水面に映る光が煌めけば水精霊「ルナ」が水の泡を弾けさせて喜ぶ

それが彼女にとっての日常で精霊たちは村の恵みであり「アマガミ」にとって精霊たちは孤独な日々を支え時には友達として時には家族として癒やされる大切にしていた時間だった特に

いつも傍にいてくれる「ナッシュ」と「ルナ」は彼女にとってかけがえのない存在だった

しかし、ある日その平穏は魔王の瘴気が押し寄せ蝕み始めてきた事によって終わりを告げ村の生活は一変し透き通るエメラルドグリーン色の水で神秘的であり美しい雰囲気を漂わせていた碧潭は濁り

その輝きを失い魚が獲れなくなり村人たちは飢えに苦しみ始め漆黒の闇が浮かぶ精霊たちの清らかな歌声は絶望がほとばしる悲鳴へと変わり「アマガミ」は精霊たちの痛みが

まるで自分の事のように胸を締め付けて引き裂かれる思いを感じた

「アマガミ」は湖岸で助けを求める精霊たちの天を仰ぐ声を聴いていた

「……苦しい助けてよ……」

その声は日を追うごとに弱々しくか細く瘴気の元凶である湖底に潜む巨大な魔物の存在を知る

けれど自分には何の力もない「アマガミ」は無力な自分に怒りを覚え震える手を握りしめ唇を噛みしめた

「お願い「ナッシュ」「ルナ」このままじゃ皆が精霊たちが死んでしまう！私に救う力が……あるなら私に力を貸して！……」

「光の精霊よ我が歌声に応じ〜その姿を顕し道を照らしたまえ〜【ルーメン・エレメンタリア〜精霊召喚魔法〜】」

湖辺に座り震える手で「アマガミ」が祖母から受け継いだ横笛を取り出し

そう切なる願いを込めて代々受け継がれてきた横笛を吹き旋律を奏でた亡くなった婆様や母様の伝承では笛には銀髪の歌姫の魂の欠片の熱源が宿ると伝えられている

音色に呼応して横笛からは光彩陸離たる閃光が放たれ幻想的な風景を描き出し

澄み渡る音律と共に空間に七色の光の粒子が舞い上がる

それは、やがて小さな精霊の姿へと形を変え風の精霊の「ナッシュ」は穏やかな優しい風を吹かせ彼女の髪を揺らす水の精霊「ルナ」は清澄な水の雫となって「アマガミ」の頬を伝い光を咲かせ水面に波紋を広げ姿を現した横笛の周囲をくるくると舞いながら曲節を待つように寄り添った妖精たちは彼女の心に触れ

その祝福の輝きを横笛に宿し風と水の精霊が彼女の前に姿を現す

「力を貸すけど無理はしちゃダメだよ」

「危なくなったらすぐに逃げようね……でも私たちが……いるから大丈夫……」

「ナッシュ」と「ルナ」は彼女の周りを旋回する

その瞬間、彼女の体に精霊の温かい力が流れ込むのを感じた湖岸で立ち上がり精霊たちの優しい言葉に「アマガミ」の心は熱くなった村人たちの顔と悲しい声で泣く精霊たちの姿が彼女の背中を押す周囲で風がうねり水が渦巻く

「うん一緒に行こう私だけの力じゃない皆の力だ！あなた達の痛みを終わらせたい！」

「アマガミ」は精霊たちの力を借り共に巨大な水の竜巻と風の刃を操り湖中の魔物に立ち向かい

この悲劇の元凶を打ち倒す為そして再びこの星に光を取り戻す為に「アマガミ」の胸に戦う決意を固めた

「風よ刃と化して切り裂け〜【ヴェント・セラフィカ〜熾天使の微笑み〜】」

風がうねり水が渦巻きナッシュの力を借りた風刃の魔術が放たれ湖面を斬り裂いて竜巻を巻き起こす

「水よ祈りの渦と成りて浄めよ〜【アクア・サルヴァティオ〜水の救い〜】」

ルナの力を宿した水の浄化術が輝きを放ち濁流を押し返す

「これは私と精霊たちの最初の戦い！」

「ナッシュ」と「ルナ」の協力を得て

風と水の妖精を従え

それは「アマガミ」にとって初めてその身に戦う精霊の力を纏う三つの力が共鳴し彼女の足元から巨大な水流が立ち上り旋回する竜巻と奔流が交差し天へ伸びる風が刃となり湖面を切り裂き深き底へと突き進む暗き湖底に潜む極大な魔物へと向かって底に潜む魔物が唸り声を上げ、その瘴気を震わせた

それは少女と大切な知音であり一家眷属である精霊たちが共に挑む最初の戦い失われた光を取り戻す為の始まりの一歩であった