第13話

夜空に咲く花火を見上げながら、裕子はそっと正樹のほうを見た。横顔を照らす光が、彼の横顔を幻想的に浮かび上がらせる。


「…美咲さんとは、どういう関係なんですか?」


裕子は勇気を出して尋ねた。


正樹は花火から目を離さずに言った。


「幼馴染だよ。家族みたいなもんだ」


「…そう、なんですね」


「なんでそんなこと聞くんだ?」


正樹は裕子の顔を覗き込むように尋ねた。


「なんとなく、です」


裕子は正直に答えることができなかった。まさか、嫉妬していたなんて言えるはずがない。


「…そっか」


正樹はそれ以上は何も聞かなかった。ただ、裕子の手から伝わる温かさを感じながら、再び花火を見つめた。


夜空に大輪の花が咲き、音を立てて消えていく。その度に、裕子の心臓はドキドキと高鳴った。


花火が終わり、帰り道、二人は祭りの賑わいを避けるように、海岸沿いの道を歩いた。波の音が、心地よく響く。


「東京、どうだった?」


正樹が尋ねた。


「変わらなかったです。でも、少しだけ…強くなれた気がします」


「そっか。よかった」


正樹はそう言うと、裕子の手から自分の手を離し、彼女の肩を抱き寄せた。


裕子は驚いて、彼の顔を見上げた。彼の目は、真剣だった。


「…俺も、頑張るよ。お嬢さんに負けないように」


その言葉に、裕子の胸が熱くなった。


「私、裕子です。渡辺裕子」


「…知ってるよ」


正樹はそう言って、優しく微笑んだ。


裕子は、彼の温かい胸に顔をうずめた。都会で感じていた孤独や不安が、まるで嘘だったかのように消えていく。


「また、会える?」


裕子が尋ねると、正樹は頷いた。


「ああ、いつでも」


その言葉に、裕子の心は満たされた。

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