【夏の】おまえらなんか怖い話ない?【風物詩】part49

Akira Clementi

風鈴の家

あなたが聞いた・体験した怖い話や拾ってきた怖い話をしてください。


ジャンルや事実の有無は問いません。怖ければOK。


【これだけは守ってください】

・長文を投稿するときは、メモ帳などにまとめてから一気に投稿してください。

・コピペは転載元を提示。外部サイトは許可取り必須。

・他の人が書き終えるまで、投稿は待ってください。

・煽りや荒しはスルーで。

・スレ立ては>>980の人。

・>>980以降は次スレが立つまで減速お願いします。



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0213 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:01:39.91

入っちゃいけない廃屋っていうと、うちの地域には「風鈴の家」って場所があったよ。


0214 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:02:43.29


         _Ω_  


        (o ::::::::)


          ̄I ̄


          | ̄|


          |  |


          |  |


          |::::::|


           ̄


0215 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:02:53.01

風流だな


0216 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:03:49.22

聞く?


0217 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:04:32.09

聞かせてもらおうか


0218 風鈴の家 2023/07/05 23:20:22.53

俺が子供の頃住んでたところには、「風鈴の家」って呼ばれてる廃墟がある。ブロック塀はところどころ崩れてて、平屋の一軒家は半壊してそのまま放置されてた。


この家には絶対に入っちゃいけないって、子供のときに皆言われる。昔理由を訊いたら、父さんにめちゃくちゃ怒られた。だから理由は知らない。


でも、入るなって言われると入りたくなる。

だから小学三年生のとき、俺と幼馴染のOくん、いつも一緒に遊んでたKちゃん、Kちゃんの弟のIくんの四人で夏休みにそこに入ったんだ。


0219 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:21:03.92

wktk


0220 本当にあった怖い名無し 2023/07/05 23:21:46.27

>219

黙ってろ


221 風鈴の家 2023/07/05 23:22:04.64

入ってみたら、中は荒れ放題だった。畳が腐り落ちて、家の中にまで雑草が生えていた。


家具なんかも全部残ってて、開けっ放しになっているタンスからは花柄のワンピースとかがはみ出ていて、茶色いしみができてた。仏間と思しき場所には白黒の写真も飾りっぱなしだったよ。

古い黒電話とか、でかいキ〇ーピーの人形とか、とにかくいろんなものが散乱してた。


そんなに広くなかったから、俺たちはすぐにあらかた調べ尽くしてしまったんだ。思っていたより全然怖くなくて帰ろうかってなったとき、Iくんがいないことに気がついた。

Iくんは普段から落ち着きがない子だったから、ひとりで勝手にうろついてるんだろうって思って皆で名前呼びながら探したんだ。


Iくんはすぐに見つかった。ぼろぼろの段ボールや衣装ケースが散乱している板張りの廊下の途中で、ぼーっと突っ立ってた。


222 風鈴の家 2023/07/05 23:24:01.11

KちゃんがIくんに声をかけてみたけど、反応がない。仕方ないから引っ張って帰ろうとして、KちゃんがIくんの手を掴んだときだった。


りん、って音がした。


ガラスを叩くみたいな、澄んだ音。風鈴の音っていったら、分かるだろうか。そんな音だった。


でもガラスが割れてる窓にはそんなものぶら下がってないし、見てきた場所のどこにもそんなものなかった。近所の家の風鈴かなと思ったけど、それにしては音が近すぎる。


音が聞こえたのは俺だけじゃない。皆が息を呑むのが分かった。声を出しちゃいけない、動いちゃいけない。そんな気がして、皆目線だけを動かしてお互いの顔を見てたんだ。


そしたらまた、りん、って音がした。


223 風鈴の家 2023/07/05 23:25:36.81

音がしたのは、俺たちの後ろからだった。

風鈴の音だけじゃない。


りん、ぎし。

りん、ぎし。


何かが廊下を歩いてくる音がした。

振り向いちゃいけないと思った。でも振り向かないと、帰れない。出口はそっちの方向だ。


りん、ぎし。

りん。


音が止まった。紙がこすれたときみたいな、かさかさって音もする。

皆で、ゆっくり振り向いた。


224 風鈴の家 2023/07/05 23:27:09.27

全身お札まみれの何かが立ってた。上から下まで黄ばんだ大きなお札まみれで、ところどころ茶色いしみがついていた。何なのか全然分からない。

でもそいつが一歩踏み出したら、あの風鈴みたいな音がした。廊下がぎしっと軋んで、幻なんかじゃないって分かった。


Kちゃんの悲鳴で、俺たちは弾かれたように駆け出した。突っ立ったままだったIくんを、Kちゃんと俺で引っ張って無理矢理連れていく。


考えなしに狭い廊下を走った俺たちは、すぐ行き止まりに辿り着いてしまった。ベニヤがばりばりに剥がれたぼろいドアがあるけど、そこはトイレだ。家の中を調べていたときに確認した。逃げ場がない。


でもあいつは、ゆっくり近づいてくる。


そのとき、Oくんが「トイレに入れ!」って言ったんだ。あいつがいなくなるまで籠城するしかない。KちゃんとIくんを先に押し込んで、Oくんに背中を押されて俺が入る。和式便器のトイレはめちゃくちゃ狭いけど、なるべく奥に詰めた。


Oくんが片脚を突っ込んだとき。


りん、って大きな音がした。


あいつだ。


トイレに入ろうとしたOくんが、後ろから引っ張られる。俺は夢中でOくんの腕を掴んだ。でも子供なんかじゃ太刀打ちできないくらい、Oくんを引っ張る力は強かった。汗ばんだ俺の手から、Oくんの腕がずるずる抜けていく。


手が離れると同時に、ドアがばたんと閉じられた。開けようとするけど、びくともしない。必死でOくんの名前を叫んだけど、返事はなかった。


何度もドアノブを捻って、体当たりをし続けた。肩が痛くなってきた頃にやっとドアは開いたけど、そこにはあいつも、Oくんもいなかった。


Iくんはまだぼんやりしたままだったけど、Kちゃんと一緒になんとか外に連れ出して、俺はもう一度風鈴の家の中に戻った。Oくんを助けなきゃって思ったんだ。

でも、家のどこにもOくんはいなかった。


225 風鈴の家 2023/07/05 23:28:49.11

もう俺たちだけじゃどうしようもないと思って、家に走って帰った。


ちょうど買い物から帰ってきた母さんにOくんのことを話したら、母さんは慌てた様子であちこち電話をかけ始めた。


それが済むと、母さんは俺とKちゃん、Iくんを近くの寺に連れていった。

母さんが俺たちが風鈴の家に入ったと話すと、いつもはにこにこしてる年寄りの坊さんの顔がみるみる険しくなった。


俺たちだけで坊さんに連れて行かれたのは、寺の座敷だった。ああいうところって広い部屋ばかりのイメージだったけど、俺たちが通されたのは狭い四畳半だった。


扇風機をつけてくれた坊さんに、「誰に名前を呼ばれても襖を開けないように。返事もしないように」って言われて、俺たちはその部屋に閉じ込められた。Kちゃんはずっと泣いていて、Iくんはぼんやりしたままで、なにがなんだか分からないまま、俺はそこで立ち尽くしていた。


暫くしたら、襖の向こうを誰かが歩く音がした。さわさわ、さわさわって何かを引きずりながら歩いている。


りん、ってあの音がした。


音が、襖の前を行ったり来たりしている。

あいつが来たって、すぐに分かった。


226 風鈴の家 2023/07/05 23:30:18.91

さわさわという音が止まったら、声がした。


「Y(俺の名前)、お母さんよ。開けて」


俺の母さんそっくりの声だった。


「Y、お父さんが倒れたの。病院へ行かないと。出てきて」


坊さんにあらかじめ言われていたから、俺は返事をしないように歯を食いしばってた。襖がかたかた揺れていたけど、外側からは開けられないみたいで、またあいつはさわさわという音をさせながら歩き出した。


りん、という音がまた聞こえて、あいつが止まった。


「K、迎えに来たよ」


Kちゃんの兄さんの声だった。名前を呼ばれたKちゃんが、びくっと肩を震わせる。


襖がかたかた揺れて、またあいつが歩き出す。


りん、という風鈴の音。


次に名前を呼ばれたのは、Iくんだった。


「I、開けて。お母さん荷物がいっぱいで開けられないの。手伝って」


Iくんを見ると、その口がゆっくり開いていく。俺はとっさにIくんの口を手でふさいだ。


その後も何度も何度も俺たちは名前を呼ばれたけど、絶対に襖を開けなかった。


227 風鈴の家 2023/07/05 23:32:18.91

坊さんが俺たちのいる部屋の襖を開けた頃には、すっかり日が暮れていた。もう家に帰ってもいいと言われたから、迎えに来た親と帰ろうとしたとき。


「ねえ、Oは!? Oとは一緒じゃなかったの!?」


Oくんの母さんに肩を強く掴まれた。


「Oがいないの! ねえ、何か知らない!? Oも一緒だったんでしょ!」


がくがくと体を揺さぶられる。Oくんがどこに行ったのか、俺が知りたいくらいだった。最後に見たOくんの恐怖でひきつった顔も、Oくんの腕が手をすり抜けていく感触も、忘れられない。


俺が何も答えられずにいると、Oくんの母さんはその場で崩れ落ちて号泣し始めた。


あれからずっと、Oくんは見つかっていない。


風鈴の家の廊下で見つけたときからずっとぼんやりしたままのIくんは、元に戻らなかった。夏休み前までは普通のクラスにいたのに、二学期からIくんは支援学級に変わって、それから暫くしてKちゃん一家は引っ越していった。

Kちゃんともなんだかぎくしゃくしてうまくいかなくなってしまっていたから、あの後Iくんがどうなったかは分からない。

今でも、風鈴の音を聞くとこの話を思い出す。


228 風鈴の家 2023/07/05 23:33:01.08

終わり。

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