第2話 出立の前夜

◇◆◇

 

翌朝、村の広場に人々が集まっていた。


彼が旅に出ると聞き、

誰もが黙って見送ろうとしていたのだ。


「これを持っていきなさい」

老婆が差し出したのは、

織り込まれた赤い布の小袋だった。


中には乾いた薬草が詰め込まれている。

煎じれば傷や熱に効くという。


鍛冶屋の男は、

短剣を一振り手渡してくれた。


「剣一本じゃ頼りないだろ。

 護身用だ、腰に差しておけ」


彼は礼を述べながら、それらを背嚢に収めた。


村の人々の善意が重なり、

その重さは確かな温もりに変わる。


「……戻ってくるんだぞ」

そう言ったのは、勇敢な少女だった。


彼は答えを返せず、ただ小さく笑った。


日が落ち、村の門へと向かう。

門番の老人は無言で頷き、道を開けた。


夜風が冷たく吹き抜け、

星の光が淡く輝いている。


彼は深く息を吸い込んだ。

明日、いよいよ村を出る。


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