奪衣(仮)
孔雀と煙
第1話 奪衣
「来世で逢えたら、また旅をしてはくれぬか」
広い花畑、花はもう何百年も枯れずに生えている。古今東西、春夏秋冬問わずの花で埋もれている。
その中には1本道路がある。綺麗にアスファルトが引かれていて、白線が霞む事は決してない。どちらを向いても終わりも始まりも地平線の向う側に続いている。青い標識が1本道路脇に刺さっていて、そこには0号線と書かれている。時に雨、曇り、そよ風も吹く。
ここは輪廻0号線。多くの人々にとって人生の最終地点であり、来世へのスタート地点でもある。勿論畜生道で生を全うした者も0号線を通ればまたチャンスが与えられる。
私は木宮音松。今よりうんと昔、何百年前にここに来た。
現世で大切なモノを無くし生を全うした。囲炉裏の横に敷かれた薄い布団で私は苦しんでいた。家来に看取られながら私は息を引き取った。
「我は死んだはずじゃ」
装束を身に纏った私がいたのは霧がかる湖。足元は浅い水で覆われていた。
「ここが、極楽なのか」
ひたひたと波紋を立てながら歩く。何とも湿気っているが布が肌に張り付く感覚は無いし気だるさも無い。
あれからどれ位経っただろう。数時間、数日間、数年間か。ここにいる限り私は疲れを感じない。
空腹も、眠気も無い。
遠くに一本の木のようなものが見えた。六尺はある様に見える。枝が真中で二股に分かれ片方は上に、片方は横を指している。
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