レオ・コートルードの困惑

@me__me_ko

第1話 家業

レオ・コートルードは困惑した。


父であるチャド・コートルードから告げられた事実は彼にとって受け入れ難いものだった。

「父さん、嘘だろ?」

目を見開いて父を見つめ、そう絞り出したレオに

「残念だが、嘘ではない。すまんな、レオ」

チャドは哀れみの混じった眼差しで優しく答えるしかなかった。


レオの家は代々続くこの町では名の知れた調停屋の息子である。レオはそのことを誇りに思い、自身もいつかは調停屋として家業を継ぐものと思っていた。

しかし今、尊敬する師であり父であるチャドから告げられたのは

調停屋は表向きの家業であり、真の家業は別にあるということだった。

そしてその真の家業が、「勇者」だというのだ。


「どういうこと???勇者が家業って、、」

レオが父に問いかけると

「俺たちの家系が勇者の家系なんだ。お前のじいちゃんも、俺も、勇者として世界を救った。

お前もその家系を継いで、そろそろ次期勇者としての準備を始めてもらわなきゃいけないんだ」

と答えた。


勇者の家系ってなんだ、、、?

そもそも勇者って継ぐものなのか、、、?

次期勇者なんて始めて聞く言葉だ、、、

レオの頭の中には疑問が渦巻くばかりだ。


「勇者って、、何をしたらいいの?」

戸惑いながら再び問いかけるレオ。

「まぁまずは鍛錬だな。魔物と戦ったりすることもあるだろうよ。

お前、武器は何にする?

勇者っぽいのは王道の剣だが。俺が聖剣を手に入れるまで使っていたのを使うか?」

父が聖剣を手に入れていたなんて初耳だ。

「聖剣は、今はないの、、、?」

「魔王を倒してから眠りについたよ。次はお前が聖剣を抜きに行くんだ」

当たり前のように言われ、レオは再び困惑した。

「俺、自分が勇者になれるとは思えないんだけど、、、。父さんはどう思うの??」

「一般的な勇者像とは違うが、俺は、なれると信じてる。お前はお前なりの勇者になればいい」

真摯な目線をむけられたが、レオは腑に落ちない。

「うん、、、。とりあえず、、今日は寝るよ、、」

そう言ってトボトボと自室へ向かった。

「急にすまないな。でも、事実なんだ。

今は受け入れられないかもしれないが、頼むぞ。」

去っていくレオの背中に、チャドはそっと声をかけた。

「うん、、。おやすみ」

レオはそう答えるのが精一杯だった。

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