第11話 マリアローズと西条つぼみ

西条つぼみと会おうと思ったマリアローズは、星華に頼み、星華が通っている聖女アルシア学園の前で待っていると、正門の前に星華と西条つぼみが現れた。


西条つぼみはマリアローズを見て驚いた顔をした後挨拶をしてきた。


「ごきげんよう。星華さんに呼ばれたので来たのですけれど、あの時のあなただったのですね」


「うん、あの時はありがとう」


「いいえ。立ち話もなんですし、わたくしの家に来てください歓迎いたしますわ」


「ありがとう、じゃあお言葉に甘えようかな。そうだ、星華とレオンも連れていきたいんだけど大丈夫?」


「レオンさん?」


そう西条つぼみが疑問に思いながら言うと、レオンがマリアローズの後ろから現れ挨拶をする。


「初めまして、俺はレオン・アルベールって言うの。よろしく」


「よろしくお願いします、わたくしの名前は西条つぼみですわ。どうぞお見知りおきを」


「俺の場合はマリアと星華を介して知り合ったんだけどね」


「そうですの。とても仲が良いですわね」


「仲良くねぇよ」


そう言いながら、くすくす笑う西条つぼみにマリアローズは話を再開させる。


「自己紹介は君の家でゆっくりしてもいいかな?僕は君と大事な話があるんだ。お願いできる?」


「ええ、もちろん。それでは行きましょうか」


そう言って西条つぼみは、待っていたリムジンに3人を乗せて、自分の家の西条家に向かっていくのだった。



そして西条家に着いたマリアローズ達は、つぼみに連れられ、彼女のお気に入りの庭でティータイムをする事になった。


自分の家より広い庭を見渡しながらマリアローズは紅茶を飲む。押しかけたような物なのにご丁寧に紅茶まで出してくれるつぼみに、マリアローズはお嬢様は住む世界が違うなと思う。


紅茶を飲みながら一息ついたつぼみはマリアローズに問いかける。


「それでは、まずはわたくしに何の用があるのと、あなた様がわたくしを仲間にしたいと星華さんから聞きましたけど」


「うん、そうだよ。君を仲間にしたいんだ」


「最初の時も言いましたが、わたくしはあなたみたいな助けが必要なお方達を助けるために、わたくしの事情に、巻き込むのはダメだと思い一度断ったと思うのですけれど……」


「うん。そうなんだけど、君の誰かを助けたいって願いに僕らも協力したいと思っているんだ」


「あなた方が?」


「そう。俺は別にいいって言ったんだけどマリアがどうしてもあんたの力になりたいんだって。そうすれば、あんたの力を使ってマリアの目的も果たせるしね」


「レオン君、そんな風に言うのはちょっと……」


「目的?」


そう首を傾げるつぼみに、マリアは「目的じゃなくて願いね」とため息をつきながら話す。


「その願いとは何ですの?」


「……実は、君がこんな戦いに巻き込まれたのは僕のせいなんだ」


そして、マリアは星華やレオンに話した事をつぼみにも話す。本当はつぼみに話して彼女がどんな反応をするのかは怖かった。正義感の強い彼女の事だ。きっと僕の事を怒るかもしれない、自分勝手なやつだと言われるかもしれない。実質レオンがそう言っていたから否定はできないが。


いつもこの話をするたびに自分が嫌になるし、否定もしたくもなる。それでも仲間になってくれるならちゃんと話すしかないのだ。背に腹はかえられない。自分の事よりも、彼女のように誰かを助けなければならないのだから。


そうして自分が今まで起こした事をすべて話した後、マリアローズ達4人の会話がなくなる。しんとした空気になり、しばらく無言が続いていた所につぼみのため息が聞こえてきた。


「……事情は分かりましたわ。まさか、この世界はあなたが変えた世界だとは思いませんでしたわ……。しかもその虹色の薔薇によって世界が変わるとは……。奇妙な物ですわね」


「……ああ、僕もおかしな事だと分かるよ。あの虹色の薔薇が何なのかは分からないし、それに頼るまでに追い詰められていた自分にも呆れるけど……」


「あなたの理由は分かりましたわ。確かにあなたのせいだと言われればそうかもしれませんけれど、それ程までに辛い事を経験していたのもまた事実。わたくしはあなたを責めたりはしませんわ。それにあなたは反省しているのですし、それに向かって頑張ろうとしている。それはとっても偉いことです。マリアローズさん、あなたはもっと自分を大切にしてください。あなたの事を理解してくれるお方達もいるのですし」


「そうだよ、マリアローズ君。マリアローズ君は自分を責めすぎだよ。私が言うと説得力ないかもしれないけど、もっと前向きにやろう。きっと元の世界に戻す事出来るから」


「つぼみさん、星華。ありがとう……」


「いいえ、わたくしは当然の事を言ったまでですわ」


そう言って首を振りながら笑うつぼみに、ほっと安堵するマリアローズ。きっと怒られると思っていたが、彼女は怒る所か、自分を否定せず肯定をしてくれた事に彼女の優しさに感謝する。


だが「何で星華といいつぼみといい色々言わない訳?意味わかんない」と言っているレオンには、少しぐらい優しさがあって欲しいのだが。


「話は分かりましたわ。確かにマリアローズさんの仲間になれば、わたくしの人助けをしたいという願いも叶えられますし、それによって新たに仲間になる人達とも出会えれば、あなたの元の世界に戻したいという願いも叶えられる。と言う事ですわね」


「うん、そうなんだ。だからお願い、僕の仲間になって欲しいんだ」


そう言って頭を下げるマリアローズに、つぼみは前を見据えて「分かりましたわ」と言ってくる。


「え、いいのかい?」


驚いて聞くマリアローズに、つぼみは「かまいませんわよ」と笑顔で言ってくる。


「あなたと一緒にいればわたくしの人助けも出来ますし、何よりあなた方の手助けが出来るのならよろこんでやりますわ。これからよろしくお願いしますわね。マリアローズさん」


「ああ、よろしく西条さん」


「つぼみでいいですわよ。後、星華さんもレオンさんこれからよろしくお願いします」


「よろしくね、つぼみちゃん!」


「うーん。よろしく、つぼみ」


一度断られたからダメかと思っていたが、事情を話した事で協力してくれる事になってくれて良かった。とりあえずは一安心だが。


そう安堵するマリアローズに、つぼみが質問をしてくる。


「それでなのですけれど、この世界になる前の元の世界はどんな感じなのですの?」


「えっと。3人は何か覚えている事はない?」


そう問いかけると、3人は首を横に振って覚えていないと言った。


「僕が見てきた事だと、色んな人との関係性や本来は死ぬはずのない人が死んだりしてるんだ。だからもしかしたら、3人の関係性か何かが変わっているかもしれない……分からないけれど」


「それすげぇよな。だったら元の世界の俺ってどんな感じだったんだろう。まあ、どうでもいいけどさ」


「ですがそれ程までに、世界を変える程の力を持つ虹色の薔薇ですわ。普通ではまずない。それの事についても調べた方がいいですわね。そして、敵を倒せば元の世界に戻せるのならばそうしていった方がいいですし」


「色々課題があるんだね、私も頑張らないと。やっぱり最初は敵を沢山倒した方がいいって事、だよね」


「まあそうじゃない?敵を沢山倒す傍ら虹色の薔薇の事とか色々調べた方が良さそうかもね」


「そうだね。まずはその2つの事を重点的にして、そして他に何か分かった事があればお互い話してやっていこう」


マリアローズがそう言うと「そうですわね」「うん!分かった!」「へいへい、分かりましたよー」とつぼみと星華とレオンが返事をする。


今後の事はこれで決めたが、つぼみの言う通りあの虹色の薔薇の事についても調べた方がいいし、何より他にも自分がまだ気づいていない事があるかもしれない。


そうと決まれば、またノートに書き出して情報を整理しよう。そして、3人と協力してやっていくんだ。今はまだ弱いけれど、星華やレオン、つぼみもいるから頑張れる。誰かが一緒だとこんなにも勇気が持てるのは初めて知ったのだから。


目の前の3人を見ながら、マリアローズは口元に笑顔を浮かべてそう思っていたのだった。


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マリアローズの魔法〜世界を取り戻す物語〜 千本木レナ @hanamoti

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