第9話 会話
運命的なやり取りを経て私今泉に念願の友達ができました。その名は松島ひかりちゃんです。ひかりちゃんとの付き合いが始まってから一週間が経ったが彼女は初対面の印象通り優しくて可愛いとても良い子だった。本当に何で自分を選んだのか分からないくらいなのだが少し辿々しくも続く会話を楽しんでくれているようなのでもうドッキリかもという要らない詮索はしなくてすみそうだ。ひかりちゃんにも他の友達がいるしクラスも別々なのでずっと一緒にいるということはできないが喋ることのできる時はよく話をしている。
ある時、会話の流れの中で気になっていたことを聞いてみた。
『どうして私のことを知っていたの?それから何で友達になりたいと思ったの?自分で言うのもなんだけどあんまり目立つ方でもないし友達ができやすタイプでもないんだけど。』
『なんとなく』
『それだけ?深い理由があるんじゃないの?なんか怪しいなぁ。』
『別に何も怪しくないよ。入学して早々移動教室があってクラスの前を通った時に今泉ちゃんが外を見てるのが目に入ったの。直感的に面白そうだと思った。少し迷ったけどなんの繋がりもないから手紙を出してみたんだよ。』
『ふぅーん、そうなんだ。まあそういうことで納得しとこうかな。』
こんな他愛もない話を終始して時間だけがどんどんと過ぎていくがそれが今までの学校生活になかったものだと思うと妙に変な感じがした。
またある時別の疑問が浮かび上がったので下校中にひかりちゃんに聞いてみた。
『こんなこと聞くのちょっと恥ずかしいんだけどさ、特にどこを気に入って友達になろうと思ってくれたの?自分でも長所という長所が思い浮かばないんだけど。』
『最初は直感だったけどたまに見えるいろんな行動がちょこちょこしてて動物っぽく見えたことと所々気遣いが見えて優しそうだなって思ったの。あんまり具体的にいうと恥ずかしいけどそんなところかな。』
『そうなんだ。自分だとあんまり分からないけどなんか嬉しさで変な笑顔が止まらないなぁ。でへでへ』
『なんなのその笑い方、全く面白いんだから。今度は逆に私の第一印象を教えてよ。』
『そうだな。ひかりちゃんの第一印象は優しそうだなっていうのと自分には不釣り合いなくらい可愛いなっていうのだったかな。なんだったら最初会った時ドッキリだと思ってて精一杯虚勢を張るために脳内で全方位に中指立ててたんだから。』
『あの時そんなこと考えてたの。警戒してるのはわかってたけど。あっ、もうこんなところまで来ちゃった。私ここで曲がらなきゃ。中途半端になっちゃったけどまた明日ね。』
『バイバイ。また明日学校で。』
ひかりちゃんと別れ、歩いていると帰り道をこんな風に歩いて帰れる日がついに来たのかとしみじみと趣深い感情が溢れてきた。なにわなくとも友がいるそんな一節をこころのノートに刻みながら赤になりかけの横断歩道を全速力で渡る私なのであった。
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