第24話 三女神の遺産
王都の冒険者ギルド本部。
荘厳な大理石の階段を上がり、アレンたちは登録所の奥へと通された。
「これにて、君たちは正式に──Bランク冒険者として認定される」
ギルド長が証明書を手渡すと、場の空気が一気に華やいだ。
「やったな、アレン!」
カイルが背中を叩く。
「これで胸を張って“中堅”って言えるぜ!」
「中堅って言い方、微妙に嬉しくないけど……まあいいか」
アレンは苦笑しながら証明書を受け取った。
ひと息ついたところで、アレンは仲間たちを見回した。
「正直に言うけど……俺とカイルはSランク、Aランク相当の実力がある。だけど──リリアナ、ソフィア、セレーネ。君たちはまだ、実力が足りない」
「なっ……」
リリアナがむっと眉を吊り上げる。
「何よそれ! 私は許嫁なんだから、私たちぐらい守りなさいよ!」
ソフィアも小さく手を挙げる。
「そ、そうです……許嫁ですから……」
「わ、私も……!」
セレーネまで割り込んできて、場が修羅場じみてきた。
アレンはため息をつき、真剣な眼差しを向ける。
「もちろん守るさ。でも──これからはもっと危険な場所に行く。俺一人で守れる範囲には限界があるんだ」
リリアナは口をつぐみ、やがて腕を組んで言った。
「……じゃあどうするのよ」
「防具を揃えよう」
アレンは即答した。
「今の装備じゃ、命を守り切れない。もっと強い防具を用意する。それが結局、俺たち全員を守ることになる」
ソフィアが頷き、セレーネも決意を込めて弓を握る。
リリアナはしぶしぶといった顔ながらも同意した。
「……わかったわよ。でも、選ぶのは私がするからね」
カイルは両手を上げて笑った。
「おー! ついに俺たちのパーティーも装備を新調か! 楽しみだな!」
アレンたちが訪れたのは、王都で最も古いといわれる老舗の防具屋だった。
店内には古びた鎧や革製品が並び、年季の入ったカウンターの奥から白髭の店主が顔を出す。
「ここなら、きっと良い防具が揃うはずですわ」
セレーネが胸を張って言う。王女としての立場から、資金はすべて自分が出すと豪語していた。
だが──。
「……なんか、女性向けのは貧弱なのばかりね」
リリアナが試着した鎧はごつすぎて動きにくく、ソフィアのローブは量産品と変わらない。
セレーネ自身も試しに羽織った軽鎧に不満げな顔をした。
アレンは腕を組み、真剣な顔で言った。
「女性向けでもっといい防具はないのか?」
店主はしばし沈黙し、やがて声を潜めた。
「……本当に欲しいのか?」
「もちろんだ」アレンが即答する。
「ならば──伝説級の品がある。“三女神の遺産”と呼ばれる防具だ」
店主は奥から古い巻物を取り出し、机に広げた。
イリシアの魔導ローブ
魔力を飛躍的に高めるとされる、魔女女神の衣。
ヴァルキリアの鋼棘アーマー
身にまとう者の筋力を増幅する、戦乙女の鎧。
シルフィアの風翼マント
風を纏い、俊敏さを与える、天空女神の羽衣。
「これらは三女神が人に与えた防具だと伝えられている。だが実物は失われ、作り方だけが残った。……ただし、必要な素材を集められた者は、未だ誰一人いない」
アレンは目を輝かせ、拳を握った。
「素材を持ってきたら、本当に作ってくれるのか?」
店主は頷いた。
「約束しよう。材料さえ揃えば、この手で鍛えてみせる。ただ……本当に伝説通りの力を持つかは、やってみないとわからんがな」
「よし、決まりだな」アレンは仲間たちを振り返る。
「次は“三女神の遺産”を作るために素材集めだ!」
リリアナはため息をつきながらも、目を輝かせていた。
「……どうせ断るんでしょって思っているかもしれないけど、こればかりは乗ってあげるわ」
こうして、一行の新たな目標が決まった。
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