第21話 Bランクへの道

アレンたちはギルドの掲示板を前に集まっていた。


「いろいろ依頼は受けてるけど……とりあえず、冒険者ランクを上げようと思う」

アレンの言葉に、リリアナが眉をひそめる。

「……ランクを上げてどうするの? 依頼の山は減らないわよ」


カイルがすぐさま胸を張った。

「馬鹿言うなよ、リリアナ! ランクアップは男のロマンだ!」


「……それは否定できないな」

アレンも神妙な顔でうなずいた。


ソフィアが少し困ったように笑って言う。

「でも、ランクを上げれば立ち入り禁止のエリアにも行けるようになりますよ。幻花や神器の探索にも役立ちます」


「なるほど……」リリアナは渋々納得しつつも腕を組んだ。


ギルドの受付に効率よくランクアップする方法を尋ねると、受付嬢はにっこり笑って答えた。

「一番早いのは、無限地下迷宮の地下三百階到達です。そこまで行けば、確実にBランク認定されますよ」


「……なるほどな」アレンは目を輝かせる。

「じゃあ、もう一度潜ろう!」


「決まりね!」カイルも嬉しそうに拳を握った。

「私も頑張ります」ソフィアが胸に手を当てて微笑む。


リリアナはため息をついた。

「……ほんと、あんたたちって単純」


アレンが何気なく口を開いた。

「でもその前に、王都の石畳の修復が終わってからな」


「……は?」リリアナがぴたりと動きを止める。

「え、何それ」カイルが目を瞬かせる。

「昨日、石畳の修復依頼を受けたんだ」アレンがさらりと告げた。


「勝手に依頼を受けないでええええっ!」

リリアナの叫びがギルド中に響き渡った。



王都を出発して数日後。

アレンたちは、ふたたび無限地下迷宮の巨大な入口に立っていた。


「よし、今回は本気で三百階を目指すぞ!」

アレンが胸を張ると、リリアナが肩をすくめる。

「石畳の修復はちゃんと終わらせたんでしょうね」

「もちろん!」

「……ほんとに?」


カイルは早く潜りたくてうずうずしていた。

「さっさと行こうぜ! エーテルカートに乗れば、前回の記録──地下百三十五階までは一気に行けるんだろ?」


迷宮内を縦横に走る魔力浮遊の台車、エーテルカート。

記録を持つ冒険者だけが利用できるため、乗り込むと係員に記録票を確認された。


「地下百三十五階までですね。お気をつけて」


魔力のレールに乗ったカートは滑るように降下し、目にも止まらぬ速さで迷宮を突き進む。

人工の光が流れる中、アレンたちはあっという間に前回到達地点へ到着した。


「楽勝だな!」カイルが背伸びをする。

「ここからが本番よ」リリアナは腰の短剣を確認する。


アレンが足を踏み出し、仲間を見回す。

「三百階がBランク到達点ってことは……今の階層はDランク相当ってところかな」


ソフィアが頷く。

「そうですね。この辺りの魔物はそれほど強くないはずです」


「なら余裕だな!」カイルは大剣を担ぎ、笑みを浮かべる。

「慢心しないで。迷宮は奥へ行くほど何が出るかわからないんだから」リリアナが釘を刺す。


それでも、一行の足取りは軽かった。

仲間たちは自信を胸に、三百階を目指して迷宮のさらに深部へと進み始めた。

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