第19話 ギルドポイント稼ぎ

翌日。

アレンたちは朝一番で冒険者ギルドへ足を運んだ。

カイルは胸を張り、わくわくした様子で受付に向かう。


「よし、昨日の黒牙の拠点を潰した件で、ギルドポイントを頼むぜ!」


受付嬢は書類を確認し、にっこりと笑顔を浮かべた。

「……ギルドに正式な依頼として登録されていませんので、残念ですがポイントにはなりません」


「はぁぁぁぁぁ!?」

カイルがガクンと膝をついた。

「命がけで幹部まで倒したのに、ノーポイント!? そんな馬鹿な……!」


「だから言ったでしょ」リリアナが呆れ顔でため息をつく。

「勝手に動いた分は、ギルドの実績にならないのよ」


気を取り直し、アレンは尋ねた。

「じゃあ、Dランクで受けられる依頼で、ポイントが高いのは?」


受付嬢は一枚の依頼書を差し出した。

「近隣の村の近くで、オークの群れが目撃されています。このまま放置すると村を襲う危険があるので、討伐依頼が出ています」


「オークか……数が多そうだな」アレンがつぶやく。

「でも放っておけないわね」リリアナは依頼書を受け取り、堂々と頷いた。

「私がリーダーとして受けます」


「よし、それじゃあ行くか!」カイルも立ち上がり、気合を入れる。


その横で、セレーネがにっこりと笑った。

「もちろん私も行きます。パーティーメンバーですから」


「王女様がオーク討伐って、どう考えても危ないんだけどな……」

アレンは苦笑しつつも、結局反対できなかった。


こうして一行は、新たな依頼──オーク討伐へと旅立つことになった。



翌日。

装備を整えたアレンたちは、近隣の村の外れに広がる森へと足を踏み入れた。


「ここにオークが出るのね」リリアナが辺りを見回しながら、素早く縄を張り巡らせていく。

「罠の準備は任せて。引っかけて動きを止めれば、あとはあんたたちの仕事よ」


「了解!」

アレンとカイルは剣と大剣を構え、待機する。


セレーネは弓を取り出し、凛とした声で言った。

「では、私が先陣を切ります。……ほら、ここにいますよ!」


鋭い矢が木々を裂き、オークの群れを威嚇する。

咆哮を上げたオークたちは誘導されるまま、罠の範囲へ突進した。


「かかった!」

縄が弾け、数匹が転倒する。

そこへアレンとカイルが飛び込んだ。


「はあっ!」

「うおおおおっ!」


剣と大剣が閃き、オークたちは次々と倒れていく。

あまりに手際がよく、ソフィアはただ両手を胸の前で合わせて応援するばかりだった。

「が、がんばってください! みなさん、すごいです!」


やがて森は静寂に包まれた。

アレンたちは討伐したオークの牙を一つ一つ回収し、袋に詰め込んでいく。


「これで依頼完了だな」カイルが満足げに笑う。


だがその時、背後からしわがれた声が響いた。


「……ほう。私が召喚したオークどもを、これほど容易く倒すとは」


振り返ると、森の奥からフードを被った謎の老人が現れた。

枯れ枝のような杖を突き、深い皺の間から怪しく光る瞳を覗かせている。


「なっ……召喚した、だと?」

アレンが警戒して剣を構える。


老人は不気味に笑い、杖を地面に突き立てた。

「ならば──これならどうだ」


地面に黒い魔法陣が広がり、重々しい振動が大地を揺らす。

次の瞬間、天を衝く巨体が姿を現した。


緑黒色の肌、王冠のような骨角、そして巨大な戦斧を携えた怪物。

「グオオオオオォォッ!!」


「オーク……キング!?」

リリアナが息を呑み、セレーネが矢をつがえる。


アレンは剣を握り直し、仲間に叫んだ。

「全員、構えろ! ここからが本番だ!」


森が揺れ、オークキングの咆哮が轟いた──。

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