反転シンデレラ 解説

※こちらは解説です。意味は全てわかった! という方は読み飛ばしてもOKです。


 有名な童話「シンデレラ」に、同性愛っぽい要素をプラスしてみた本作品。原作と違うのは魔法使いからシンデレラに対する思いともう一つ、魔法で出したドレスと靴の扱いでした。


 原作では、十二時の鐘が鳴るとドレスが消えてしまう。しかしガラスの靴は残るので、それをたよりに王子様がシンデレラを見つけ出しハッピーエンド。本作ではこれを反転させて、「時間がきたら靴だけが消える」という設定にしてみました。


 魔法使いの小さないたずら心が生み出した時間制限。靴が突然消えたら、足をもつれさせてしまうだろうと魔法使いは想像していました。


 シンデレラが魔法使いを選ぶのなら問題ないし、王子様を選ぶとしても、ダンス中に足がもつれるくらいなら、本当にかわいいいたずらです。ところが、シンデレラはもっとも愚かな選択をしました。王子に心を奪われておきながら、土壇場で選択を翻したのです。


 結果として、シンデレラが階段にちょうど差し掛かったタイミングで、十二時の鐘が鳴りました。「落ちたら最悪死んでしまうかもしれない」と魔法使いが心配していた階段の、一番上で……。


 それでなくても歩きにくい靴で走っていたシンデレラは、突然履いていた靴が消えるというハプニングに対応できたのでしょうか。階段の真っ赤なカーペットが、さらに赤くなっていないことを祈るばかりです。


  まあ、もしかしたら咄嗟に手すりを掴んで無事だったかもしれないし、そもそも落ちたとしても案外軽症かもしれないし……と書きたくなってしまうのは、作者がホラー嫌いの意味怖好きという終わっている人間だからでしょうか。


 ここからは完全に余談ですが、シンデレラは童話の中でもかなり海外の雰囲気が強いと思っていて、そのおかげで「ダンス」「パーティー」「タイミング」といったカタカナ語を罪悪感なく入れられて楽でした。他の収録作は日本の童話が元ネタであることが多く、世界観を守るためにカタカナ語を漢字に直すのが結構面倒だったりします。これを読んでいる作家さんはカタカナ語を普通に使える環境に感謝してください。


 ここまで読んでくださりありがとうございます。解説と感謝(と雑談)を終えたところで、これにて本当に、めでたし、めでたし。

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