恋ごころのねじれ方

三屋城衣智子

恋ごころのねじれ方

 彼女は都内で女子高生をしているが、マックの世田谷区にある規模が大きく周りに緑と川が多く、混雑していた。

 今日はハッピーセットの新作開始日だからか、店内には人が溢れかえりそうなほどだった。

 シロガネーゼや仕事に疲れたサラリーマン、ハッピーセットをせがむ子供が、メニューを見ては彼女の目が忙しなく動き、フロートを頼んだ。

 ここのマックは外と中の一体感を狙っているのか、自然を感じられる内装をしている。

 彼女の指がスマホをタップしては、レジの男は彼女ににこやかな笑顔をむけている。

 フロートを受け取り、店内を見回すと二人掛けのテーブルを見つけ腰掛けた。

 座ったことで短めのスカートの裾から、太もものふにっとした白さが目に眩しい。

 ストローに口をつけ頬がすぼまったあと眉が寄ったのは、冷ややかな食感が口内へと広がり喉へと落ち、頭に響いたからだったのかもしれない。

 その白魚のような指がストローを所在なげにつかんでは、茶に染めつつも艶やかさを保った髪が肩口からサラリと滑る。

 暑さを和らげようと立ち寄ったので、ひとごこちついた後は家路へつくのだろう、ゴミ箱へと向かう。

 立ち上がる時に伏せられた瞳には、豊かなまつ毛の影が落ちては、一言も発しないことを残念に思いごみ箱へと向かった。

「……あ、お先にどーぞ」

「……ど、どうも」

 店から出ると日が落ちかけ、全ては朱に染まり、ツクツクホウシが鳴いていた。

 家に帰ろう。

 店から出た彼女の頬は赤く染まり、少しすがめた瞳は輝く宝石のようで、僕を照らしていた。

 家に向かおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋ごころのねじれ方 三屋城衣智子 @katsuji-ichiko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ