Independence
Hyumore
第1話
1
雪が降る。蛍がパシパシと光り揺れる。公園の蛍光灯がチッチチと点滅する。雪が降っている。
「太郎さん!」
女が強く呼びかける。
「すまない。もう行かなくてはいけない」
風が強く吹きすぎ、視界が白くなった。
2
ここはどこだろう。俺は何をしたのだろう。
風が強く吹いた。帽子を押さえつけた。
なんだっていうんだ。俺が何をしたっていうんだ。
流れる。川が流れる。
光が不安定に見えた。光だ。
きっと続いていくのだろう。諦めろというんだろう。
「嫌だ!」
叫んだ。
「嫌だ!」
もっと叫べ。諦めるな。諦めるな!
「嫌だ!」
……。
3
ありがとう。
ついにこの日が来たね。
ありがとう。
今日はとても喜ばしい日だ。
頼んだよ。
さあ!二人を祝おう!
寂しくなりますね
ああ、そうだな。
お父さん!見てみて!
おお!すごいなあ。
ありがとう。
幸せになりなさい。
お父さん、お母さん。……
はいじゃあみなさんいきますよ
はいチーズ
綺麗だね
綺麗……
大きな宇宙を見ている人が二人……。
4
こっちだ
おい急げ
こっちだ
走れ!走れ!
あきらるな!走れ!
ああ!二郎!ああ、二郎が!
一郎振り返るな!死ぬぞ!
でも二郎が!
逃げ惑う人々
夕暮れ、疲れ果てた人々
朝
また逃げる
逃げなくては
逃げなくては
諦めるな!
一郎!走れ!おい!一郎!
みんなもういない
みんな、みんな……
Ⅰ
かけた茶碗が薄汚れた畳に一つ。
青緑に縁側から照らされている。
聞こえるのは船の中の音。
キインキインポーロロロ。
薄暗い薄黄色の船室は揺れている。
ボオオー。
灰色の空の下、緑色の海の上、船はどこへ向かうのか。
Ⅱ
ここは?
霊界です。
ふやふやして捉えがたいですね
音も光も歪んでいますから
こちらが扉です。開けますか?
リンリンと音の聞こえてくる白い扉だ。
ええ
いいんですね
ええ
開けますよ
今……いくよ……
薄れてゆく……。
(リンリンリン)
Ⅲ
なんの音だ。
キーキー。
目覚まし時計のような音に目が覚めた。
音はいまだに止まらない。
キーキー。
木の柔らかな軋んだような音だ。
窓からは街が。
これが……未来の街……
遥か下に地面が見える。
今……来たよ……
Ⅳ
泡がミットミット音を立てて割れていく。
俺らはみんなしたい。みんな手に入れたい。星を手に入れたい。
でも所詮無理な話だ。俺らを待っているのは死、それだけだ。
全部俺の話じゃない。みんなが思っていることだ。
死と笑顔の磔が俺らのいく末だ。
泡が泡がミットミット音を立てて割れている。
地下、底には水が……。
Independence Hyumore @Hyumore
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