Day1.

体育館裏。

もうすぐ秋だというのに秋の気配は一向に無く、熱気が二人を包んでいる。

二人の首筋をじっとりとつたう汗は一体なんの所為だろうか。


「ねぇ、早く撮ってこいよ」

「え、いや、でも……」

「おい!!!」


私は幼馴染だった彼女の弱々しい背中をめいっぱい蹴り倒した。


「っ。痛い、やめて。蹴らないで!」


彼女の精一杯の願いも、私の心には届かない。


「ならぁ、やれるよね、花純かすみ?」


自分でも出していて気色悪い猫なで声に思わず耳を塞ぎたくなる。

でも。


「……っ」

「ね?」


走り去る長袖のセーラー服の少女の背を見送る。


「ふぅ……」


薄暗い廊下の掲示板には『イジメダメ。絶対。』という標語が大きく、明るい色で書かれた某ヒーローアニメキャラのポスター。小中高一貫だからといって、小学生向けのものをここに貼ったって誰も見向きもしない。


「いつ撮ってくるかな、早くりつに目をつけられないと……」


「高校」というカースト制度が出来上がった空間の中では、教師の存在すらも無いようなもので、一歩流行にでも遅れればたちまち下位に転落し、下剋上が巻き起こる。


「お願いっ……」



◇◆◇◆



翌日になり、花純が亡くなったことが知らされた。

左手の手首からリストカットの痕が見つかったって知らされて。

真夜中に首吊り。


遺書にはイジメについてが書かれており、私は一気にカーストを転落。

花純と同じようにイジメられる側に見事まわった。

それからはただただ耐える日々。


辛い。

いやだ。

蹴らないで、殴らないで。

ごめんね、花純。


でも、違う。


「私がやりたいのはこれじゃない。」


ごめん、花純。

もう一回。


私は目の前で鈍く輝く刃物を喉に突きつけて、掻っ切った。

痛い。

あつい。


これでこれは終わる。

頑張れ後の自――

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