断片的に残る初恋の呪いには

作者さんの小説を読むと私は、圧倒的な懐古とその夏の日の匂いを感じます。

断片的に残る記憶。
例えば母親に連れられて登った階段や、縁日の記憶。でもそれらは切り取られたかのように、その後のことは覚えていない。
ある夏の日、主人公は母の知人の家で、暇を持て余しています。

まっ黒な敷居と鴨居と柱とに四角く切り取られた夏が広がっていた。額縁の夏。そこに少女が飛び込んでくる。

スクール水着に白いシャツ、麦わら帽子を被った女の子。

淡い初恋。でも、どこの誰かもわからない初恋が、いつまでもつきまとう呪いのように。よくわかります。このどこの誰かもわからないけど好きになった初恋というのは、結構残酷だと思いました。決着がつけられないから、いつまでも心に残ってしまう。まるで呪いのように。

だけど、例えば言い出せずに終わった初恋も似たような気持ちだなと思いました。

圧倒的な心残りと共に、自分の一部として残ってしまう。そんな経験は誰しも持っているのではないかと思います。

そんな気持ちを、叙情的で圧倒的な、夏を感じさせて読ませてくれました。

最後、性癖になってたらどうしよう…と若干の心配をしましたが、これきりだったと信じたいです…。

どこか懐かしい共感を持ってしまう、圧倒的な夏を感じる。そんな素敵な作品でした。
拝読できて嬉しかったです!ありがとうございました!😊🌸