第15話・2006.4.25(tue)『憧れの朝マック』

紺野に色々謝りたくって、朝イチで公園に呼び出した。俺はてっきりもう7時ぐらいだと思ってたんだけど、どうやら1時間勘違いしてて朝の6時にあいつに電話して、10分後に来いとか言っちゃった。それに気づいたのが公園についてからで、公園の時計見た瞬間俺の心臓は半分止まった。


たまにこういうウッカリをやらかす。紺野は大事な友達なのに。完全嫌われる・・・そう思ったら悲しくって悔しくて、俺はシクシクと泣いていたんだ。


そしたら紺野はちゃんときてくれた。いつもじゃ体育でも息切らさないのに、ゼエゼエいいながら自転車こいで公園に来てくれたんだ。



で、色々話をしてさ、そのあとマックにいくことにしたんだ~。んふふ・・・。ともだちと・・・朝マック・・・。なんて甘美な響きなんだっ


俺が感動に浸っていたら、思い切り後頭部を紺野がはたく。

「何ボケてんだよ。注文しろよ」

・・・はたくなよ、痛えだろっ!でも、それも全て俺の思い描いた理想の親友関係☆☆新商品の朝マックがあったんで、それといつものエッグマフィンのセットを頼んだ。ま、紺野のマネをしただけの話だけどね。


紺野は食いながらたまにうとうとしてて、『眠いの?』ってきくと、ぼんやり俺をみて『平気』という。


だるそうにしてる時とか、眠そうな時とか、紺野って妙に男っぽいんだ。声もかすれててさ。かおりって女とヤったとかいってたけど、ってことは紺野も勃つってことじゃんね・・・。脱がしたりするってことなんだよね・・・身内でもない女をさ・・・


・・って身内脱がしてどーする気なんだよ俺のバカ


なんにしろ俺はそのへん未経験だから、想像すらできないんだよね。未知の世界。宇宙より遠い世界。ぼんやりとそんなヨコシマなことを考えていたら、紺野が俺に声をかけてきた。



「幸村あ~・・・」

「えー?」

「・・お前・・かわいい顔してるよね・・・」  


「え?!」


「・・ほんとに彼女とかいないの?」

「いないけどっ・・俺モテないし!」


予想外の話の展開にビビる俺。年中紺野のことばっか考えてて、数千パターンの会話妄想してた俺でも、さすがにこの展開は予想してなかった。紺野はファンタをストローで吸って、ごくんと飲むと、ぼんやりと話を続ける。


「自分で気づいてないだけじゃない?普通にモテそうなのに」

「モテないよ!お前、目が腐ってんじゃねえの?」

「淋しがり屋が一人でいてもいい事ないよ。彼女作れば?」

「・・・・」


・・俺は今は・・女なんかより・・・友達の方が欲しいもん・・・・。


黙ってる俺をチラっとみると紺野は少し考えこんで、手に持ってたジュースをコトンと置いた。

「わり。ちょっと思っただけ。余計なこといった。ごめん」


二つ目のハッシュポテト食いだした紺野を見て俺はぼんやり話し出す。

「ねえ・・・」

「・・・ん?」

「・・俺・・お前のこと・・・比呂って呼んでいい?」

「・・・・なにいってんの・・好きに呼びゃあいいじゃん」

やった・・・。名前呼び捨て権ゲット!ならばさっそく。


「比呂」

「・・・・んー・・?」

「ちょっと聞けよ・・あのさー・・・」


比呂はだるそうにそっぽ向いて、それでも一応俺の話を聞いてるみたい。時々俺の方をみて、そんでまたそっぽを向くんだ。俺は話しながらコーラを飲む。あれ?コーラってこんなにうまいものだったっけ?


外を見たら、青い空が抜けるようで・・ああ・・あれは俺の心の色だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る