最終話 爆誕 SAKE story


 あれから、考えに考え抜いてシェリアは再び店を四週間程臨時休業にした。そこで、リアンナが見たものは想像の遥か斜め上。


「悪いんだけど、冒険者ギルドの併設酒場にこれを置く許可をとって来てほしいの。ついでに、領主様の許可とドワーフのオジサン達や商業ギルドにも連絡お願いね」



 リアンナは奔走し、シェリアは腕まくりして頭にヘアゴムまでして気合をいれて。魔導具を制作。


 そして、それは完成した。完成してしまった。



 騎士団の人に総出で運んでもらって、その日は商業ギルドと錬金ギルドの職員にそれぞれ来てもらった。


「シェリアさん、これは一体……」


 それは未だかつて無いほど巨大な魔導具だった。



 様々なボタンやツマミが並んでいて、一見すると何の魔導具かすら判らない。


「これは、酒 ストーリーという魔導具になります」


 キリッとした外行きの表情で、説明を始めた。再三、酒を求められて鬱陶しかったので。これを御用意しましたと、ドワーフのオッサンの方を向いて黒い笑顔を向ける。



「まず、販売価格は一杯銀貨一枚です。酒場の方には、売れたら私に一杯につき銅貨五枚。別途メンテナンス費用や保守点検の時に料金を頂きます」


「酒一杯に銀貨一枚たぁ穏やかじゃねぇな」


 ドワーフ達の眼が据わる。それをシェリアは、その文句は後から言ってよと一蹴した。


 まず、この取り込み口に材料となる果物または、蜂蜜または、穀物を入れます。これは、商業ギルドがこのマイストーリーの横で適切に加工したモノを販売してくれる手はずとなっております。


 そこで商業ギルドの職員が頭を下げた。次に銀貨を一枚投入し、コースを決めます。一番上のつまみを冷たいのがいいなら左に、ぬるいなら真ん中熱々がいい方は右に回して下さい。「こうか?」とドワーフの一人がふみ台を持ってきてつまみを左いっぱいに回した。次に、年月を決めます。若い、適齢期、老いたの等複数のボタンがありますので押して下さい。上から順番に操作を決定するとランプが消えて動かせなくなる。


 ドワーフ達は老いたを選択、次に酒精のツマミがあり、右に回す程アルコール度数の高い酒になると言われドワーフは目一杯右に回した。


 最後まで操作を完了させると、これで間違いないですか? と箱から声がして選択した全てのランプが点灯した。そして、間違いがなければスタートを押して下さい。と赤いデカい丸のボタンのスタートがこれみよがしにチカチカしていて。ドワーフは首を捻りながらボタンを押す。


 するとまるで、自爆カウントの様な音声で。六十秒カウント。コトンとカップが落ちる音がした。


「アナタのストーリーが完成しました」と機械から声がして、差し出されるカップ。口を付けた瞬間に目を見開く。


(これはっ!)


 もう一度、自分が選択したボタンと。投入した材料を確認する。そして、悟った。これは、注文通りの酒を作る魔導具だ。


「銀貨の価値はある一杯だと思いますが如何でしょう?」にんまりした顔でシェリアが黒い笑顔をしながら全員を見た。変わるがわる、自分の好みの酒を作って試して飲んで。その場に居た全員が唸る。



((((((このアマ、何ちゅう魔導具を作っとんねん))))))


 いや、凄すぎでしょ。これ。


 六十秒で酒の酒精から若い年寄温度まで選択出来るんかいっ!


 いや、それだけじゃない。取り込み口に入るものなら果物だろうが蜂蜜だろうが野菜だろうが穀物だろうが酒になるって事? ブレンドなら取り込み口で混ぜて複数入れろって? 選択出来るツマミにタルの香りとかあったぞ!


「シェリアちゃん……」


「どうしても、吟蛇は無理だったから。じゃぁいっそ自分で好きなお酒を作って楽しめたら、いいんじゃないかなって思って」


 無い胸を逸らして、シェリアがドヤ顔。



 もう、二度とこんな大掛かりなものは殺されたって作らないからねと。念押しし、二台目以降は他の魔導具技師に頼んでよとぷりぷりしている。


(いやいやいや、こんなすげーもん俺達に作れるわきゃねぇだろ)


「それで、酒飲みの皆様に聞きたいです。この質問の答え如何によってはこれは持って帰ります」


 その台詞を聞いて、一部の騎士団のメンバーは泣きそうな顔に変わる。運んだ時、クソ重たかったからだ。



「この一杯に銀貨の価値が無いと思う方はいらっしゃいますか?」


 シェリアにとってはとても大事な質問だ。ドワーフ達はもう一度、自分の手にある酒を見つめ。眼を閉じた。


「シェリアちゃん、俺からいいてぇのはだ」ガンドが一人前にでた。



「うん、オジサン」


 ガンドが息を吸い込み、にかっと笑う。


「これに、銀貨出せねー奴はドワーフじゃねーいや、酒のみじゃねぇ! 確かに吟蛇とかに味は届かないさ。でも、これは好きな酒を出してくれる魔導具だろ?! 画期的にも程があらーな!! 材料買えってのも、俺達の拘りってのを良くわかってる。流石俺達が認める職人だっ!」


 私は職人じゃなくて、雑貨屋なんだけどという呟きはスルーされた。


 おう、お前らこれは味に金払えって言ってんじゃねぇ。俺達にとって凡ゆるものが酒に出来るこの魔導具の技術に払えって言ってんだ! 俺達はキツイ酒じゃねぇときかねぇ。だから、必然買う酒は選べねぇ。


 所がコイツはどうだ? 全ての対象物が俺達好みの酒に出来るんだぜ?! 発想がぶっ飛び過ぎて俺は脱帽だ。コイツがありゃ、この世の全てが酒にできると言っても過言じゃねぇ。酒は試すだけで年月かかるがコイツはたった六十秒でそれを叶えやがる。


 俺だってこれが自分の作った魔道具だってなら。決めた料金払えねぇ奴は使うんじゃねぇって言いたくもなる。


 だって、それだけあんた達がうるさかったんだもん。という言葉は心の奥にそっとしまった。


 ドワーフ達も酒を見つめながら口々に確かにと呟いた。


「なぁ、シェリアちゃん。やっぱり、アンタは最高の職人だ!」ガンドが言った瞬間にバチーンと音がして、頬に紅葉がついた。



「う ち は 雑貨屋ですっ!」


 全員が笑いを我慢して、我慢できていない。プッククみたいな声が漏れている。



「酔い止めに、ウチの回復飴とかもよろしくお願いします」と営業スマイル。


「ドワーフはそこまで酔わねぇよ。美味いつまみでも置いてやってくんな。俺は先日焼いてたサツマイモみてぇな奴がいいなぁ。ありゃ最高だ」


 笑顔のまま固まるシェリア、そう言えば何故か私のおやつ用のサツマイモの横にトウモロコシと同じ料金がってオジサンが売り物と勘違いしたのかなーんだあはは。


「ねぇ、オジサン」急に声が低くなる。


「おう」「私の焼きイモ持ってったのってオジサン?」「金ならちゃんと置いてったろ?」「あれは売り物じゃなくて、あたしのオヤツだったんだけど?」


 途端に脂汗がいっぱい吹き出て、酒場の床を水浸しにしていく。


「すまん」ガンドは頭を下げた。シェリアも長い長いため息の後でもういいわよ。と苦笑した。ガンドは妻子持ちで、奥さんは酒と甘味が大好き。


 ましてや、楽しみにしていた甘味を勝手に持って行ったなどと知れた日には何が起こるか大体把握していた。



「にしても、これ本当すごいですよ。蜂蜜材料のミードでウォッカみたいな酒精の奴も作れるし。ビールでもエールでも、ホット常温冷たいのまで選べるなんて。これ一台で酒飲み全員の夢叶えられるんじゃないです?」


「時空魔法を使わなくても、実際に寝かせなくても一杯限定で。時間を進めたり出来るのもすげぇ」


「大事に使ってよね……、私疲れてるから。何かあったらリアンナさんに言っといて」それだけいうとシェリアはふらふらと去っていった。



 実際の所は、シェリアにしては少し頑張っただけでしっかり寝ているわけだがそれでもこんなものを作れば流石に疲労が溜まる。


「暫く、働きたくないなぁ……」そんな言葉が口をついた。


「私のスローライフ……どこぉ〜」ふらふらと帰路につくシェリア。幾らアリ達が手伝ってくれたって、元々働きたくない。程々に仕事が来て、適当にお茶して。


 もっと、のんびりしたいとずっと考えていた。リアンナがここに居たら、きっと店長の自業自得ですなんて辛辣な事を言われるのだろうけど。それでも、リアンナさんが来てくれてから毎日が楽しい。ずっと一人で、店の中で座っていたから。



 でも、正直に言えば……。



 私は、雑貨屋でスローライフがしたいな。



 この後の事を考えない様に、シェリアは自分の店に帰って寝た。


<おしまい>


シェリアの雑貨屋さんは如何でしたでしょうか? この作品は一旦ここで終わりです。忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございました♪。ご好評につき少し閑話を用意しました。閑話も引き続き毎日一話です。


m(._.)m

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