アラとパピリオ
たこやきこうた
アラとパピリオ
アラとパピリオ
たこやきこうた
僕は、
ある夜、道に迷った僕は、明かりの灯る家の扉を叩いた。
次の瞬間、扉が開いて中から誰かが外へ出てきた。そこには、月明かりに照らされた美しい少女の姿があった。
彼女の名前はアラといった。
アラは、
「いつまでだって居て良いのよ。」
と言って、行き場が分からなくなった僕を家の中に招き入れてくれた。
彼女は僕の身の回りの面倒を
医学の心得のある僕は、メモリアーレ・アルボルサクラ・プラニーティエース病院の夜勤のアルバイトをすることにした。献身的な彼女に報いるため、少しでも彼女に裕福な暮らしをさせてあげたいという気持ちで、夜勤も眠らずに頑張れた。
幼い入院患者から「
僕の一回分の夜勤の収入は、庶民の
僕は生まれつき心臓が悪く、
彼女との毎日は、僕にとって新たな発見の連続であり、とても充実していた。
例えば、身につける物にしても、僕が今まで
「え?こんなに安いならアラの分まで買ってあげられるじゃん!」
僕がそういうと、アラは、
「良いのよ、私も働いているのだから。」
と、微笑みながら言った。
それでも僕は、アラに何かしてあげたかった。何でもしてあげたかった。
そんなある日アラが体調不良を訴えた。気になる点があったので、知人の血液内科医に彼女を診てもらうことにした。
検査の結果、彼女はプルプラ・トロンボキュトペーニカ病と診断された。
この病気は、
僕は自分が心臓移植のドナートル待ちだということも忘れて、アラのサポートをしてあげたいという気持ちでいっぱいだった。
その為に、僕は家事を覚えた。包丁を使うような料理は僕が全て行い、アラにはさせないようにした。
夏にアラを海に連れて行きたかったが、砂浜を裸足で歩いてはアラが危険なので、砂浜は靴を履いて歩き、海の家で食事をしながら海を眺めることにした。
このような夏の海だったが、彼女はとても喜んでくれた。僕は彼女の笑顔を見られただけで、とても嬉しい気持ちになった。
ベランダで野菜やハーブが作れることも、僕にとっては新たな発見だった。
美味しいものをアラに食べさせてあげたい。彼女を外食にも連れて行ってあげたいけれど、自分が育てた新鮮な野菜やハーブも食べさせたいという気持ちが溢れてきそうだった。
僕が作った小さなリュコペルシウムを冷たく冷やして美味しそうに頬張るアラが愛おしかった。
お気に入りの家具を一緒に手作りしたこと、一緒に部屋の模様替えをしたこと、一緒に料理を作ったこと、町の酒場に繰り出して一緒にボウルボンを飲んだこと、喫茶店巡りをしたこと、一緒に
僕はアラにもっと喜んでもらいたくて、彼女に内緒で裏庭一面にプルクラ・ルナリスの苗を植えて世話をしていた。そして、この裏庭に花が咲き乱れる頃、プルクラ・ルナリスの花園でアラの姿を写真に収めたかった。
彼女は写真館で
一枚ぐらいは笑顔の写真があっても良いのでは?と僕は常日頃から感じていた。 だって彼女は、とても
もし僕の移植手術が間に合わず、動くことさえ大変になったら、恐らく僕は病院のベッドの上で
その時、ベッドの
しかし、アラは僕の病気のことをまだ知らない。
思い切って彼女に僕の病気のことを告げた。
「アラ、僕は生まれつき心臓が悪いから、子供の頃に一度大きな手術を受けているのだけれど、予後が思うようにいかず、移植手術のドナートル待ちをしているところなの。
だからね、僕は自分の子供に心臓病が遺伝するのは嫌だから結婚もしない。僕が何でこんな体に産んだのだと親を恨んだように子供も僕を恨むだろうから子供はいらないの。
……けど、アラとはずっと一緒にいたいの。」
と。
アラは、
「私、あなたが居なくなったら耐えられない。
あと私、子供は欲しいよ。 たとえ血のつながりがなくても、別の種族の子でも良いの。 あなたと一緒に育てたい。」
と言って涙ぐんでいた。
その言葉に対して僕は、
「種族が違っても良いのなら、
と、提案した。
アラは黙って頷いた。
数日後の休日に、農場のカストゥス・グリュキニウスさん宅から生まれたばかりの
プルプラ・トロンボキュトペーニカ病を患っているアラに、ウーニアニアンが爪を立ててしまって彼女の傷から血が止まらないこともあった。
しかし、応急的に、ステロイデースとメトロニダーゾルムを短期間内服させた。そして、軟膏のバキトラキーヌムまたはゲンタミキーヌムを塗布した後、傷の保護のためにペトロラートゥム・アルブムを
やがて、彼女のプルプラ・トロンボキュトペーニカ病は
僕は、ウーニアニアンと彼女と僕の三人の家族ごっこに生きる喜びを感じることができた。
この先、いばらの道が待っていて、希望も喜びも血に染まってしまう可能性があることなど、僕は、すっかり忘れていた……。
無数の
その羽はまるでプルクラ・ルナリスの花のようだった。
そろそろ
僕はアラと引き離そうとするパピリオたちが嫌いだ。大嫌いだ。二度とその姿を見たくない。
僕は天に召されるままに羽ばたき始めた。下を見ると、プルクラ・ルナリスの花が咲き乱れる花園の中に、高く編まれた
「アラ、君は長い夢を見ていただけだよ。
プルクラ・ルナリスの花園の中で目覚めた時、きっと
そう、君は自由に世界を
僕は空や花園にいる
と、僕はアラにだけ届く
彼女が僕にとっての
アラとパピリオ たこやきこうた @takoyaki-cottasan
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