青い海と森の音楽祭 ファミリーコンサート

判家悠久

青い海と森の音楽祭 ファミリーコンサート

 2025年7月6日(土)、『青い海と森の音楽祭』に行ってきました。会場は青森リンクステーションホール。ファミリーコンサート部門です。記念雑誌が出る予定はないでしょうから、ネタバレしても大丈夫かな。ここで敢えて出すことで、もしかしたら2回目のイベントの布石になるかもしれない…写真展は開催されるかもしれませんが、今のうちに書き出してみます。


『青い海と森の音楽祭』は、アウトリーチを含めると会期は1週間ほどあるのですが、私の日程が空くのは後半の土曜午前だけだったので、参加は一度きりです。結局、ライブって出会いですよね。縁がないということもままあります。できれば来年予定される2回目の本コンサートは、金曜の夜か土曜の夜に行なってほしいですね。


 会場の写真は撮ったのですが、入場時に撮影禁止とあったため、撮れ高は全くありませんでした。この規制はもう少し緩和してほしいところです。SNSでは、東京のノリでステージを写している投稿も見かけますが、どうでしょう。海外のロックコンサートでは1曲だけ動画OKだったり、フルで撮影OKだったりすることもあるんですけどね。今回、初めての開催だからこそ、露出の多さは大切ではないでしょうか。ここ青森のイベントが長続きしないのは、露出の少なさも一因です。その分、東奥日報社のほぼ独占記事になるのですが、新聞はもう取っていないので、会期が時系列でどのように消化されたか分かりませんでした。


 入場は少し早めに入りました。青森市の国道ではバスが来ない時間帯もありますから。青森では大体30分前行動なので、東京のように2時間や1時間前から集まる傾向はありません。東京から来た方は、やや面食らったかもしれませんね。


 実は私、音楽祭のサポーター会員です。「いつサポーターグッズが届くのかな」と待っていたのですが、先日リンクステーションのメーリングリストで現地引き渡しと初めて知りました。もっとタイトルを工夫してほしいです。それにしても、入会から半年経つのに連絡がないのはどうでしょう。早く郵送してくれてもよかったと思います。


 そして問題なのが、チケットです。サポーター会員だったので先行発売のチケットが買えたはずなのですが、仕事が忙しくてメールを見逃して買えませんでした。それで、次の青森県民優先チケット枠で購入したところ、なんと買えてしまったのです。チケットの受け取りはすっかり忘れていたのと、2階席でもいいかと思っていたので、開催週にセブンイレブンで受け取りました。愕然としたのは、発券時に席が確定するのではないかということでした。結果、ほぼ前列数席という奇跡が起きました。今までのライブでもそのような前列は経験がないので、これは「盛り上げろ」という運命なのでしょうか。いいですよ、頑張ります。もちろん、普段の5倍増しで拍手しました。それが前列に座った者の役目でもあるからです。


 開演前、子供たちの声があるのは当然です。何と言ってもファミリーコンサートですから。野心的です!しかし、アナウンスで「託児所があります」と言っていたのが、少し気になりました。このコンサートの趣旨は、ファミリーで聴くことではないかと、胸に引っかかりました。「おいおい」と心が引きました。都市圏にいた時は散々デッドなコンサートにも行ったので、この程度の鳴き声なら聞き分けられるので気にはなりません。全然OKです。プロであれば問題なく演奏できるだろうと思っていましたが、後にそれは証明されます。


 隣の方が開演前に、幼い子供を外であやそうと立ち上がった時、「前の席だけど、迷惑をかけるかもしれない」という気遣いに、思わず「おじさん力」が出てしまいました。「今回はこういうコンサートだし、大丈夫だから。音楽や出演者がなんとかするから」と引き留めてしまいました。今考えると、おむつ替えだったとしたら、余計なお節介だったかもしれません。おじさんを許してください。


 私の席はとにかく舞台から近すぎました。多分5メートルもないです。沖澤のどか氏が大好きというわけではないのですが、一生分のご褒美として受け取ります。


 1曲目は『ハンガリー舞曲第5番』。ガツンと、ゴム製のハンマーで殴られたような感触です。生のオーケストラの音がまるでCDのようで、錯覚を起こします。あまりに出来すぎた音なのでそう思ってしまうのです。そうなる理由は、アタックの音が同時に鳴るのではなく、各楽器のレイト特性を存分に活かした音なので、時系列に沿って適切に重なり、やや小編成の楽団でも粒まで聞こえる感覚です。指揮者も演奏家もやばくない?いや、やばいでしょう!そしてオープニング曲とあって、皆の拍手が響き渡ります。ここで沖澤のどか氏から2回ほど振り向かれました。私、うるさかったでしょうか?セミプロクラッパーだから、ピッチがフラットしない拍手で気になったのでしょうか?どちらもでしょうが、抜群に耳が良すぎるぞ、沖澤のどか氏。


 4曲目のハウルの動く城の『人生のメリーゴーランド』で奇跡は起こります。冒頭のハープの音で、子供たちの泣き声がほぼ止まりました。2階席で泣いていたのは、おそらくハープの音質が高くも低くも、うまく届かなかったからかもしれません。これは一体何という現象でしょう。沖澤のどか氏も「止まりましたね」と言及していました。私が思うに、おそらく胎内にいた時の母親の心臓に近い音が、羊水を経てハープの響きに似ているのかもしれません。胎内回帰とは、突如アカデミックな考えですが、これは次の2回目の音楽祭で何か起こすかもしれません。ワクワクしておきましょう。


 司会の古坂大魔王もネタにする、子供の泣き声事件。これがあっても順調だったコンサートですが、5曲目の『ツィゴイネルワイゼン』で、気になる人には気になるピッチ問題がやや浮上しました。バイオリンソロであれば、ややピッチが落ちていた方がより響く楽曲なんですけどね。ところがどっこい、この時点で楽団の皆様が子供たちをあやそうとするかのように、ピッチがファインに落ち着き始め、バイオリンソロとどうしても合わないところがままありました。思った以上にピッチの幅が広がってしまったのです。これはホールで聴く限りなので、東奥日報の動画ではほぼ判別できないはずです。カメラのマイクは満遍なく拾うので残念です。ここは難しいですよね。ソリストが合わせるか、楽団が合わせるか、もう突っ走るしかないでしょう。その判断も早かったですね。終演後、いや演奏中も難しい顔をしていたソリストの水野さんですが、終演後のコメントは「もっと上手くなります」でした。いや、今回のファミリーコンサートは、観客におもねる楽員の方が多かったので、ペースを見失ったのは仕方ないと思います。ドンマイで良いと思います。


 クラシック会場に笑い声も泣き声も「青い海と森の音楽祭」ファミリーコンサート https://youtu.be/hgZMFcBKnbE?si=IUcVJVDu39SVyoRu


 そしてアンコールもあり、予定を大幅に超えて終演しました。大成功。いや、それ以上でしょう。ファミリーコンサートという、年齢の幅が広すぎる、実は難しいミッションに挑んで勝ってしまったというこの現実。『青い海と森の音楽祭』は、1回目にして山を越えてしまったのです。もう2回目、3回目、古坂大魔王いわく100回目を目指していいのではないでしょうか。本当に。今思えば、この午前の部の大成功があったからこそ、お偉方々の決裁が下りたのだろうと。それほどダイハードなコンサートでした。


 言いましょう。これでもかのCMスポットでチケット販売案内を流したものの、ファミリーコンサートの席は完売しませんでした。しかし、私には分かっていたのです。この一発目のホールのファミリーコンサートこそ、何かが起きると、先年の記者会見後の日程発表からずっとヤマを張っていました。青森県人のパッションとポテンシャルは侮るべからず。図らずもアクセルを踏ませたのは、観客その方々なのですから。


 とりあえず、サポーターは来年も入って応援しておこうと思います。コンサートも、あと1回は増やしたいのですが…仕事の兼ね合いが難しいですね。もちろん、行ったら行ったで、爆上げさせるファンホスピタリティはあります。


 とはいえ、贅沢な悩みですが、2階席で聞きたかったな、というのはあります。リンクステーションホールでいつも見る時は、各アーティストのファンクラブ制度に押し出されて、青森県民は2階席で見ることが多いのです。だからこそ、リンクステーションの高い天井の構造上、音がふっと通過して、それで終わってしまうんですよね。だからこそ、今回も2階で聞いて、どれだけ響くのか確かめたかったのです。まあでも、やっぱり前の席はいい、ということですよね。来年は相当な争奪戦になるでしょう。全てが山場だろうと、フォーマルな本コンサートに一本に絞った方々にも、全コンサートを侵食されるかもしれません。しかし、それをやってしまうと、県外の方ばかりで、何か盛り上がらないコンサートになってしまうのです。青森のコンサートの現状として、青森会場なのに、席が取れやすい東京の第2会場になっていくのは、止めるべきです。演奏者のモチベーションが上がらず、せっかくの音楽祭が数回で終わってしまいます。


 というわけで、普段から問題提起している、各アーティストの公演チケット販売の問題が浮かび上がります。一体いつからその地方の人々は、前の方で見れなくなったのでしょうか。ファンクラブに入らないと良い席が取れないのは、公正取引委員会的にどうなのでしょうか。副賞的な販売の取り扱いはギリギリアウトのはずですが。これは何十年も前から言っていますが、解消してほしいですよね。その点、今回の『青い海と森と音楽祭』は成功したと思います。「青森県民ファースト」、そんな言葉を言える日が来るとは思いませんでした。言わないと届かないものですが、どういう経由で届いたのでしょう。さて…


 そして、『青い海と森の音楽祭』、無事に終わって何よりです。


「青い海と森の音楽祭」華やかにフィナーレ https://www.toonippo.co.jp/articles/-/2059496


 > 沖澤さんは公演後「私もスタッフも良い意味で音楽祭の素人。こんなことできる訳がないという空気が一度もなく、一緒にやりたいという気持ちにあふれていた」、隠岐さんは「音楽だけじゃなくいろんなことでつながれた」と語った。


 いやまあ、実は一介のファンとしては、直前までの盛り上がりに物足りなさを感じていて…成功は無理だと思っていました。私はファミリーコンサート午前の部に参加したので、やや言いましょう。いざ会場に入ると血湧き肉躍るもので(これが「ザ・青森県民」)、都市圏でフェスやイベントにやや慣れている私としては、「さあ盛り上げようか。来場者は年齢に幅があるから、負担にならないよう省エネモードで挑もうか」でした。オーバーアクションは無し、拍手は大きめ、フェス慣れしてなさそうな方にも、お節介にならない程度でアテンド…でも、アテンドはもう少し頑張るべきだったかもしれません。いや、あまりにしつこくてもあれですし、今回はスマートで良かったかもしれません。


 一応「地産地消の音楽祭」と謳ってはいるものの、升酒に並々と注いだのは、誰あろう盛り上げたファンだったという現実。そしてその溢れたお酒を飲んだのは、演奏者側だったというのも現実。逆ですよね。でもそれが2回目に繋がったので、1回目のそれはサプライズやハプニングとして受け取ります。


 また来年、仕事のタイミングが合えば青森、いや八戸かもしれませんが、クラシック音楽をご縁としてまた紡ぎたいと思います。


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青い海と森の音楽祭 ファミリーコンサート 判家悠久 @hanke-yuukyu

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