月宮家の日常

秋ノ鷹

第1話

白い髪の女は高層ビルの上に立っていた。夜風にさらされて彼女の長い髪がなびく。足元に広がる無数の光の海を見つめて呟いた。


「今日のお仕事はこれでおしまいかな」


彼女の手には淡い炎のように揺れて輪郭は曖昧だが、確かに形を持った魂がそこにあった。


「魂を回収するのが死神の仕事なのはいいけど最近本当に忙しくなったな」


魂はかすかに揺らぎ、まるで天へ還ろうとするかのように震える。だが離さない。

指先で、掌で、全身の意思で――魂を掴んでいた。


この魂はもう、私の、月宮レイラの物だ。


★★★★★★★★★


お仕事も終え自宅へと帰宅するレイラ。その足取りは少し億劫そうで疲れているのが目に見えてわかる。


「ただいま~」


玄関のドアの開けてそう言うとパタパタと足音が聞こえてきた。


青と緑の2色の瞳がこちらを見つめている。そこには黒髪でこれまた青と緑のメッシュが入った男が目の前までやってきた。


「おかえりレイラ」


「うん、ただいまお兄様」


お兄様と呼ばれた男はレイラの胸を突然触り出した。


「今日のおっぱいも最高だね!」


「にょわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


言葉には出来ないよくわからない悲鳴をあげるレイラ。その声に反応してリビングからドタドタと足音が鳴り響く。

全体的に青い髪だが右側の3割ほどが黒髪の猫の獣人が走り込んでいた。


「レイラになってやってんだゴルァ!」


「へぶしっ!!」


ドスン!という音とともに倒れるお兄様。どうやらを頭を蹴られたようだ。

蹴った本人はなんともなしにレイラに近づき抱きついた。


「大丈夫レイラ!?ごめんねこのバカ兄様をリビングから出しちゃって」


「俺って危険動物か何か?」


「うっさい!バカ兄様!変態!アホ!」


「大丈夫だよ、ゆあちゃん。いきなりだったからびっくりしちゃっただけだから」


ゆあ、と呼ばれた少女はレイラに抱きついたまま、倒れているお兄様を何度も足で蹴りを入れてる。


「ほらレイラもびっくりしてるだけなんだからいいでしょ」


「いいも何もまず触んな!」


「こんないいおっぱいを触らないのは勿体ないでしょうが!!」


「ほんとサイテー……いつか捕まればいいのに」


「残念でしたー家族だから捕まりませーん!」


この言い合いがここではいつもの日常だった。


「はいはい、喧嘩しないの」


レイラの一言で言い合いは止まった。


「あ、レイラ。ご飯にする?お風呂にする?それとも「ゆあにする?」あ、ゆあちゃんずるい!」


ゆあちゃんはべーっとお兄様に舌を出し威嚇する。


「もう!喧嘩しないでって言ったばかりだよ!ダメだよお兄様?」


「あ、俺だけ注意なんですねわかります」


「わかるんだ」


レイラはそれがおかしくてクスクスと笑ってしまう。それにつられてお兄様とゆあも笑う。

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