また、あの夜を

みつ

プロローグ

「お母さん、見て見て! 夜なのに明るくて、美味しそうな食べ物がいっぱい並んでるよ。それに、音楽も聞こえてくる!」

「そうね。今日は一年に一度のお祭りだからね。食べたいものがあったら、買ってあげるわよ」

「みんなー! 串焼き肉、買ってきたぞ!」

「それじゃあ、いただきましょうか」

「来年も、あるよね?」

「トリーがいい子にしていれば、きっとあるはずよ」

──5年後──

「母さん、今年から祭りがなくなるって、どういうこと? なんで急にやめちゃうんだよ?」

「仕方ないのよ。村の人も減って、前みたいに活気もないの。とてもお祭りを開けるような状況じゃないのよ」

「でもさ、だからこそ祭りをやるべきじゃないのか?」

「あなたの気持ちはよく分かるわ。でも、無理なものは無理なの。人がいなければ、料理も売れないし、誰が音楽を演奏するの? あなたももう10歳なんだから、少しは分かってちょうだい」


「じゃあさ、活気がないから祭りをやらないってことは──もし村に活気を取り戻せば、またお祭りができるってことだよな。だったら、俺がこの村に活気を取り戻してみせる!」

「トリー、行くの?」

「ああ。今年で15歳になったしな。いろんな町や国を巡って、勉強して、この村を俺が救ってみせるよ」

「もう15歳か。時が経つのは早いもんだね……」

「気をつけてね。元気にして帰ってくるのよ」

──そうして、俺は旅に出たのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

また、あの夜を みつ @hachi1031

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ