第十三話 [珀爾が説く]~白焉修道院篇~

 浜へ着き、二人は向かい合った。すると、珀爾が走り出し、距離を詰めようとした。しかし、皓暉も応戦する。

 〈暴炎ぼうえん

 先程とは違い無数の火の玉が珀爾目掛けて飛んでくる。それに、珀爾も反応!

 〈霧天幕むてんまく

 周りが真っ白な冷気で覆われた。すると、火の玉の動きが止まった。そう、〈暴炎ぼうえん〉による、火の玉は、皓暉の目視できる限りの操作で、動き回っていたのだ。それに、珀爾は気づいていた訳ではない。イチがバチかの賭けに出たのだ。

「あったりー!」

 珀爾は、勘が鋭いのか、洞察力があるのか。よく分からないが、珀爾が一発皓暉にパンチを食らわせた。それも、氷を纏った拳で。

 〈氷拳ひょうけん

 皓暉は、なかなかのダメージを食らったが、そこまで効いた雰囲気ではない。なにせ、十二歳とは思えないガタイだからだ。珀爾より、十センチは大きいだろう。そのガタイを活かした攻撃が飛んできた。

「おらぁ!この、張り手でも食らえ!」

 なんと、珀爾は五メートルは飛んだだろう。輪による身体能力上昇があるにしても、珀爾や、煌橙、龍惺とは比にならない力だ。

 吹き飛ばされた珀爾は遠距離攻撃を仕掛けた。

 〈青牙せいが〉!

 手の上で、先がとんがった大きな氷の塊ができ、それを、皓暉目掛けて勢いよく投げ飛ばした。皓暉はそれを避け、同じ技を繰り出してきた。珀爾は飛んでくる火の玉目掛け、小さな〈青牙せいが〉を飛ばし、相殺した。それに、珀爾は同じく走って距離を詰めてきた。

 〈霧天幕むてんまく

 先程晴れた冷気がまた、辺りを覆った。そこで、珀爾は一瞬で距離を詰めた。皓暉は思ったより早く、思わず「早っ」と口にした。

 〈氷拳ひょうけん

 また、拳を氷に纏わせて皓暉を殴った。それも、何回も。すると、皓暉は流石に効いたのかばったりと後ろに倒れた。そこで、珀爾はすかさず

「おい、皓暉って言ったか?お前、自分が強いって思ってんじゃねぇよ。相手を選べ、すぐに噛み付くな、自分をもっと知って周りと照らし合わせろ。そうしねぇと、死ぬぞ。今回は俺が相手だったから良かったけど、もっと強いやつなんてうじゃうじゃいるし、そうして死んでしまった奴だっている。ほら、」

 珀爾は、自分なりに生意気だった皓暉に説教をし、手を差し伸べた。皓暉は手を取って立ち上がり、話した

「そうだな、ごめん。俺の父ちゃんは輪術協会の人間なのに術がいまいち使えなくてさ、それが納得できなくて、一人で修行してたんだよ。そしたら、術が使えだして、父ちゃんよりも強くなったと思って…最強になってたよ、勝手に」

 それを聞き、珀爾は吹き出した。

「お、お前っ、勝手に最強になってたのかよ!おもろすぎんだろ」

 緊張が解けてバカにしてきた珀爾の腹に、皓暉がパンチを一発。珀爾は悶えてた。

「「お前、おもしれぇな!」」

 二人は、先程と立場が逆転した状態で目を合わせ、笑いあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る