第十二話 [暴炎]~白焉修道院篇~

 龍惺が亡くなってから一年後、珀爾と煌橙も前を向いて、修行に励んでいた頃、珀爾と煌橙の部屋に新しい子が来ると大焚先生が言い出した。

「珀爾さん、煌橙さん、聞いてください。一週間後に新しい子を引き取ることになりました。お二人と同級生なのもあって良ければ同じ部屋へ入れてあげて貰いえませんか?」

 そう聞かれた珀爾はどんな子が来るのか聞いた。それに、煌橙も名前や、今後の修行に関わる輪について聞いた。

「そうですね、お名前は「望月皓暉もちづきこうき」さんです。輪についてはまだ詳しくは分からないのですが、輪術の解放はできてるみたいですよ。なんせ、輪術協会の受付にいた望月さんの息子さんですので、」

 そう、あの受付の望月さんだ。

 『個人的なんですが…』と大焚先生に話しかけていた内容はその二人以外には聞こえていなかったが、こう話していたらしい。

「個人的なんですが、良ければそちらの修道院で私の息子を引き取っていただけませんか?名前は皓暉って言います。私が輪協の人間なのに輪術が大したことないことに不満を持って、一人で輪の練習をしてるんです。しかし、見ている限り解放はできていても全然上達していなくて……解放できているだけでも私よりすごいですけどね。良ければそちらで修行をさせて頂きたく思ってまして。息子も喜ぶと思いますし」

 それに対して、大焚先生は『考えときます』と返事をしていたが、今回の一件が落ち着いてから、望月さんに快く受け入れることを報告しに行ったらしい。

 そして今日、望月皓暉が珀爾達の部屋に来た。皓暉は、なんとなく挨拶をし、大焚先生に修行はまだかと聞いた。そこで、大焚先生は

「今日と明日は修行はありません。ここの二人と慣れて頂きたく修行日ずらしました」

 皓暉は仕方なく返事をし、大焚先生は部屋を出た。

「君が望月皓暉だね?よろしく、僕の名前は設楽煌橙。珀爾もほら」

「青柳珀爾っ、よろしく」

 煌橙が自己紹介を始めようと名前を言い、珀爾もつられて名前を言った。すると、皓暉か

「おうっ、よろしく頼む。んで、お前らの輪術は?」

「おぉ、強引だな。そうだね、僕の輪術は『陽光輪』太陽光みたいな熱を持った光を出せる感じだね」

 煌橙は、皓暉の言い方に少し驚いたが、丁寧に答えた。しかし、珀爾は、最初は緊張していたもののその生意気な態度がどうにも気に入らず輪術の説明どころか技を食らわせたのだ。

 〈氷縛ひょうばく〉!!

 珀爾は椅子に腰をかけながら手をかざし、そう唱えた。すると、皓暉の周りに冷気が漂い、一気に集束し、氷となった。そう、皓暉を氷で拘束したのだ。それに、皓暉は一瞬驚いたが、ニヤリと笑い皓暉も何かを唱えたのだ。

 〈暴炎ぼうえんたん

 すると、拘束され腰の横に来ている掌から、炎の玉が出現し、宙を舞い、縛り付けている氷をゆっくりと溶かしたのだ。

 輪を使いこなす皓暉を見て、珀爾も楽しくなり、椅子から立ち上がり一言

「ツラ貸せや」

 そういい、二人は修道院を抜け出し、すぐそこにある浜へ向かった。煌橙は止めようとしたが意味はなく、二人は行ってしまった。

「大変なことになるかもなぁ…先生に言うべきか、ほっとくべきか、あああぁぁぁ!僕を巻き込まないでくれよぉぉぉ!!!」

 その後、浜では珀爾にとっても皓暉にとっても、初めての輪術の実践となる、大喧嘩が始まるのだった。

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