第十一話 [冥福]~白焉修道院篇~


 事情聴取が終わり、氷室先生の部屋に大焚先生が帰ってきた。

「先生…あの龍惺君は?」

「院の中を確認したところ龍惺さんの姿は見えませんでした。ですので、恐らく逃げているのでしょう。修道院が復興されるまでに私たちで探しましょう」

 そう言い、大焚先生は各部屋の子供達に知らせた。

「今日から数日はここで生活します。少しでも早く皆さんで修道院に戻りましょう。それと、この部屋からは出ないようにしてくださいね。先生達は少し出かけてきます。時々部屋には覗きに来ますので」

 そう言い、大焚先生と氷室先生は協会を後にした。

 焼ききれた修道院に戻ると、そこには数人の土方姿の男たちが作業をしていた。もう既に修道院は跡形もなく解体されていた。そこに、大焚先生が話しかけた。

「すみません、ここの修道院の院長です。貴方達はどこから?」

 その声を聞き、若い男が親方と呼ばれる男を呼んできた。その親方は小林こばやしと名乗り自分たちが何者か。なぜここで作業をしているのかを語り出した。

「わしらは輪協の傘下の「小林建設こばやしけんせつ」っちゅうもんです。あんたが大焚さんかいな、保科さんから聞いとるで。わしらは輪協関係の建設・解体専門で働かせてもらいよんや。復興もわしらが担当の予定やけどええか?」

 大焚先生は「もちろん」と返事をし小林達に全てを任せた。そこで、小林建設の若手が走ってきた。

「あの、親方…この紙切れが壁に苦無で刺されていました」

 その紙に書かれていたものを読んだ大焚先生と氷室先生は絶句した。

 

 『蛇のガキの姿は見当たらないだろ。それが何故かわかるか、お前ら人間に。そのガキの……はワ……のも…』


 紙にはこう書かれていた。所々燃えていて完璧には読めない。だか、『蛇のガキ』……龍惺。に何かあったには違いない。と、二人は確信した。

「大焚先生一体これは……」

「そうですね、信じ難いですがとりあえずは待っている子達が優先です。もっときちんと捜査をして、龍惺さんの安否を確認しましょう」

 大焚先生も氷室先生もわかっていた。もう龍惺が助かっている可能性は少ないということを。しかし、二人は諦めない。それにまだ、守るべき子達が沢山いる。大焚先生と氷室先生は小林建設の皆さんにお礼をし、協会に戻った。

 数日後、修道院が完成したと聞き、子供達を連れて修道院に帰ってきた。そこで、珀爾と煌橙は聞かされた。

「二人共落ち着いて聞いてください。龍惺さんは亡くなってしまいました。残酷ですか遺体も残っていませんでした。ですので明日、お葬式をしたいと思います。私と氷室先生。それに珀爾さんと煌橙さんの四人でしたいと思います。いいですか?」

 どんだけ調査しても、龍惺の安全が確認できるものは一切なかった。逆に死亡している可能性が高まるだけだった。

 そう言われ二人は泣き崩れた。それを見て大焚先生も涙が流れた。

 後日、葬式は無事終わり珀爾達の部屋の棚の上に小さな仏壇を置いてもらった。二人は毎日の供養をすかさずすることを決めた。それに、強くなるためにもっと修行を頑張ることも決心した。

 

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