第四話 [外出の悲劇①]~白焉修道院篇~

 今日は振替で休み。昨日は特別に修行日で、みんなの実力を測り終わり、みんなの輪術りんじゅつが確定した。

「今日は、休日だし遊びに行かね?」

 「いいね!先生に聞いてくる」

 そう。誘ったのは氷撃輪ひょうげきりんの術者、青柳珀爾あおやぎはくじ。それに応えたのは、設楽煌橙したらこうだい陽光輪ようこうりんの術者だ。すると、東雲龍惺しののめりゅうせいがトイレから帰ってきて、一言。

 「今日大焚おおたき先生はいないよ。隣町の隣の隣に行ってるって。」

 彼は、毒蛇輪どくじゃりんの術者だ。

 「隣の隣の隣ってややこしいな…。ならさ、氷室ひむろ先生のところに行ってみようよ!」

 「煌橙天才!」

 珀爾はいつも煌橙を天才扱いをしている。

 「氷室先生?」

 クールなイメージの龍惺は以外にも能天気なところがあり、身の回りの事以外は詳しくない。だから、世話をしてくれる大焚先生しか、知らなかったのだ。

 「龍惺ってそういうところあるよね。氷室先生はここ、白焉修道院はくえんしゅうどういんの副院長先生。わかった?」

 「はい…」

 このくだりはいつもの事だから珀爾は苦笑してた。

 氷室先生に許可を取りにっていた煌橙が戻ってきた。

 「どーだった?」

 「じゃーじゃーん!千五百円貰ってきた。「好きな物買いな」って」

 食い気味で来た二人は喜んだ。三人は出かける準備をして、街に出た。

 この街は、白焉街はくえんがいと言われる人間の街。この街に隣接する人間の街は大きくわけて八つに別れる。

 今日、三人は畑をぬけ、海沿いの商店街に遊びに来た。来るのは初めてではないが、来る度に興奮する、とても楽しくていい場所なのだ。珀爾は、みんなでバイク屋に寄ろうと提案した。しかし、バイクに興味のない龍惺と煌橙は断った。珀爾は窓越しに、横目で少しバイクを見ることしかできなかった。

 「かっけぇ…いつかあのバイクにまたがってやる」

 このようなことを考えるだけでも楽しかった。

 この後、悲劇が起こることも知らず。

 「お腹すいたね、あそこのファミレスでお昼ご飯食べて帰ろうぜ」

 珀爾の提案にみんな賛成して、ファミレスに入店した。

 「俺ハンバーグ!」

 「僕もハンバーグ」

 「俺もハンバーグ」

 「全員同じですね笑、かしこまりました。」

 ……

 「美味しかったー」

 三人とも満足して、会計をして帰ろうとしたその時、

 「やべぇ、僕ら一人五百円しかない。ハンバーグセットひとつ650円だ…」

 煌橙が気付いた。なんてことだ、子供達だけだったから、考え無しの行動が招いた悲劇。珀爾は「逃げよう」と言ったが、龍惺が止めた、

 「さすがに素直に言おう」

 「店員さん優しかったしね。」

 と、続いて煌橙も。

 「そうやな、怖いけど、」

 煌橙が、レジの前に立った。

 「あ、あの、店員さんすみません。お金が足らなかったです。す、すみません。どうしたらいいでしょうか、」

 少し悩んで店員は応えた。

 「そうだね、それはダメだ。でも、今回だけは見逃してあげる。お姉ちゃんが出しといてあげる。今度からはダメよ!」

「「「本当ですか!?ありがとうございます!」」」

 一同は感謝して、店を後にした。

 「よし帰るか。」

 と、珀爾。

 「案外遠いんだよなぁ、」

 だるそうにしている龍惺に、煌橙が

 「面白いこと教えてあげる。僕だけが感じるのかもしれないけど、行きの道は長く感じるけど、帰りの道は短く感じるの。わからない??」

 珀爾と龍惺は頭にハテナが浮かんだ。

 このような他愛もない会話も、幸せだったということをは思い知らされるになる。

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