第一話 [初修行]~白焉修道院篇~


 ここは、白焉街はくえんがいと言う、人間の都市にある小さな街。その街のハズレにある孤児院に、生まれつきだろうか、黒髪の毛先が白く染まった男の子がいた。名前は「青柳珀爾あおやぎはくじ」。彼は親に捨てられていた。そこで、この孤児院「白焉修道院はくえんしゅうどういん」の、院長に保護された。珀爾の他に、同じタイミングで入ってきた同期が、二人いた。一人は「東雲龍惺しののめりゅうせい」。長めの髪を後ろで結んでいる。もう一人は「設楽煌橙したらこうだい」。橙色の眼をしている。三人は、物心が着く前にここに来ていたから、兄弟も同然だった。

 院長の、大焚一茶おおたきいっさは、みんなに「先生」と呼ばれていた。大焚先生は、修道士になるまでの修行で、「りん」を解放していたのだ。そのため、この修道院では十歳になると週に三回、子供たちに輪の修行をする時間を設けていだのだ。今日は、その修行日だ。珀爾、龍惺、煌橙は、十歳になり、初めての修行に参加する。大焚先生が初めに輪について説明してくれた。「人の身体の内には輪と言うものが秘められています。それは、エネルギーみたいなものです。それを、独自の術に流し込むことによって、体外に技として放出することがでるのです。それを、輪術りんじゅつといい、輪術を使用する者を輪術師りんじゅつしと呼びます。先生の、輪術は、「陽炎輪かげろうりん」と言います。見せてあげましょう」と、一通り説明が終わると、先生は技を見せてくれた。

陽炎かげろう〉!

 大焚先生を中心に周囲の気温が上がっていく。気温の上昇により、珀爾達は、優しそうで背の高い大焚先生が歪んで見えた。達は驚いた。

 「では、次は君達がやってみて下さい。やり方は教えるので。まず、エンジンと燃料を思い浮かべてください。「輪」が燃料。「輪術」がエンジン。燃料だけでもエンジンだけでも、それ単体では何も起こりません。しかし、燃料を流すことでエンジンは作動し、車などは動きます。エンジンも種類によって色々変わりますよね、輪術も同じです。型に流し込むんです。そして車…すなわち身体に影響を及ぼすのです。これはあくまでイメージです。コツさえ掴めれば簡単です。」

 大焚先生が話終えると、珀爾達は何を言ってるのかさっぱりな様子だ。そこで、龍惺が気合を込めて手をかざした。すると、てのひらからは半透明の小さな蛇の頭のようなものがぴょこっと出てきて、すぐに消えた。一同は「え?」状態。大焚先生は、戸惑いつつ

 「じょ、上出来です!コツさえ掴めば、そのまま磨きをかけていくだけです。」

 珀爾と、煌橙も龍惺に続き、手を翳した。しかし、二人は龍惺程の才能はなかったのか、何も出来ずに今日の修行は終わった。その日の晩、三人は話していた。

 「なぁ、龍惺。もっかい蛇出してよ」

 龍惺は、面倒くさそうに返事を返し力を込めた。

 「ふんっ!」

 すると、龍惺の手からは謎の粘り気のある液体が滴った。ベッドの上で行ったので、その謎の液体は、ベッドの上に垂れた。「ジュワァァ」ベッドが少し溶けたのだ。「なんなんだよ」

 龍惺は、自分の手から出た謎の液体が、ベッドを溶かしたことに驚き、恐怖した。

 「もしかして、これじゃね」

 「有り得る。煌橙天才ー」

 珀爾と、煌橙は他人事と思いそのまま寝た。

 その日の晩、龍惺は眠れずにいたのだった。

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