〔Side:Shino〕18. 挑発
キスって、色んな種類があるんだ。
目の前で、至近距離で、唇が合わさるところや啄むような軽やかでも情熱的な、決して離れないような深いのも、呼吸を整える間すら惜しむように。
お互いに思い合っていないとできっこない。
重なった手が両方から離れまいとかたく握られることすらも、キスの1種なのかもしれない。
苦しそうに息を乱し汗だくなリオ先輩をこのまま帰す訳にも行かず、泊まっていってもらうことになった。
「月岡さん、シャワーとお着替えお借りするね?」
「うん、タオルは後で持っていくから、シャンプーとかも好きに使ってくれていいからね」
「ううん、それは大丈夫。実はさっきのコンビニで、歯ブラシセットとかと一緒に使い切りのを買ってたから」
「準備いいね。よく二人で出かけたりとかもするって言ってたね」
「んふふ、それもあるけど。ホテルとかにも、よくね」
「そうなんだ」
ウチも最近は海外のドラマとかも観たりするから、付き合っている二人がホテルに行く理由も何となくわかってきた。
笹原さんと付き合っていた時は、付き合うのがどういうことなのかも分からないでいたけれど、今なら何となくそうなのかなという察しは着くようになった。
「もしあれだったら、狭いかもしれないけど、ウチのベッドは多少汚してもいいよ? 替えるシーツとかならあるから」
「……そこまでしてもらうのはさすがに悪いよ……そういえば、月岡さんってお人好しすぎなところあったよね」
「そう、なのかな? ごめん、人付き合いとかあまりして来なかったから……どうするのがいいのかってよく分かってなくて……気に障るようなこと言ってたら本当にごめん」
「そういうところが好きだったのもあるんだけどね、もしかしたらルームメi…………やっぱりごめん、替えのシーツ、後で貰える? リオも今日は不安そうだったけど、私のためを思って月岡さんと話せる機会を作ってくれたから……安心させてあげたくて」
「うん、わかった。部屋に置いておくね。あ、枕は1個しかないけど大丈夫?」
「ありがと、ごめんね色々と。枕も大丈夫、ありがとう」
「ううん、気にしないで。2人のこと、ウチは応援してるから」
笹原さんはウチの手をぎゅっと握ってから、リオ先輩を先に待たせている脱衣所に向かっていった。
――
2人がシャワーがら出てくると、リオ先輩にはウチの着替えを、笹原さんにはサイズ的にもあっていたジュリの着替えを着ていた。
ジュリは優しいし、後で洗濯をするから、それくらいはきっと許してくれるはず。
「着替え、大丈夫みたい。良かった」
「ありがと紫乃。改めて着てみるとちょっと大きいというか、場所によっちゃきつめだけど……」
「それ、ウチの持ってるのでは1番胸周りゆったり目だったんですけど……やっぱりリオ先輩には小さいですよね……すみません」
「あ、いやごめん違くて、あんたの体型がちょっとうらやましくて、ぜんぜん嫌味とかじゃないってば」
「月岡さん、これってもしかして……ルームメイトの方の?」
「うん、そうだよ。さすがに笹原さんには男物はね……リオ先輩は似合いそうだったからよかったんだけど」
「着心地はいいのよね、男物って」
「リオ先輩もけっこう背は高い方ですし、何着か持ってるんですか?」
「いや、あーしは持ってないけど、昔元カレに着せてもらったことあるから――」
「リオ先輩……!?」
そのカミングアウトはちょっとまずくない……?
「ん? いや、大丈夫大丈夫。元カレ多いのはミウも知ってるから」
いや、それとこれとはちょっと違うと言いますか……
笹原さんの表情がものすごいことになってますよ……?
「へぇー……元カレに……そうなんだね、リオ」
「い、いや、これは話の流れで、それにもう2年以上も昔の話だし、ね?」
「私の初めては全部もらっておいて、リオは私に全然くれないよね? どうしたらリオの初めてをもらえるかな?」
「大丈夫だよミウ、全部初めてだから、女の子とはさ。だから全部あげてるよ、あーしも」
気楽に笹原さんを挑発するリオ先輩に、ウチはなんと声をかけたらいいのか……
「……月岡さん、お部屋かりちゃうね? そして少しうるさくしちゃうかも、ごめんね。おやすみなさい」
「あ、ううん、いいよいいよ……おやすみ笹原さん。リオ先輩も、おやすみなさい」
笹原さんは先にウチの部屋にスタスタといってしまった。
「うるさくってまさかね? シャワーでも大人しかったし、ミウも人様の家でこれ以上は騒がしくできないよね?」
「リオ、早く来て」
「うん、今行く。じゃ、紫乃ベッドありがと 、おやすみ」
ひらひらと手を振るリオ先輩は、ウチと笹原さんがシャワーの前に話していたことは知らないらしい。
ウチは苦笑いを浮かべながら送り出した。
ウチは……寝支度を済ませると、のんシャとフォカの待つジュリの部屋に向かった。
今回は、ジュリが居ないことをいいことに、色々と勝手をしてしまった。
その1番はベッドを借りることかもしれない。
ベッドって安心できなきゃいけない場所で、それを勝手に使われるのが許せない人も多分たくさんいる。
一応、この間はここでジュリと一緒に眠ったけれど、やっぱり帰ってきたら正直に話しておいた方がいいと思う。
なにか要求をされたら、ウチはその要求にできる限り答えようと思う。
ジュリのことだから、変な要求はしてこないはず。
横になって目を閉じると、ここにいないジュリの気配が微かに残っているように感じた。
ジュリのにおい。不思議と落ち着くにおい。コーヒーを飲みながらぎっとするときに、ふわっと香るあの柔らかいにおいに包まれたようで、ウチがジュリにぎゅっとされているみたい。
ウチの部屋から漏れる音がもっと気になるかと思ったけれど、あまり気にする間もなくウチは眠りについたらしい。
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