クズ男に恋をしてしまったら...。
@imazuaoba
第1話 私の恋のはじまり。
「なあ、そこの消しゴム拾って」
横から、そういって落ちた消しゴムへ指を向けるきみ。
私は、人ひとり通るほどの距離の椅子に座っている君に目を向ける。
確かに、指先の先にある消しゴムは私の左の内履きに、ちょこんと転がっていた。
私は、かけている赤い眼鏡のふちを指であげると、思い切って左足元へ手をのばした。
消しゴムは、私の手の先にちょんと当たると、それを私は手の中に包んだ。
そのまま体は真横にいる彼へ向き、左手をそのまま差し出した。
「はい。」
消しゴムは、手から手へと渡った。
私は何事もなかったかのように、体を正面にある黒板へ向け、座りなおした。
「.....ッ(キュゥゥ...)」
私の手は、黒板に書かれている文字をノートへ写し取っていく。
先生の話は、あと30分の間何も変わらず続き、決まりのチャイムがなるだろう。
でも、私の心の高鳴りはどうしても何事もなかったかのようにはいかないらしい。
締め付けられる心臓。
本当に心は心臓にあるのだろうか。でも、この胸の締りは嘘じゃない。
私は、いつも叶わない恋をする。
君は、何事もなかったかのように後ろにいる女子に話しかける。
さっきまで、重なりそうだった君の手は、今はその彼女の手の上で....
「.......ッ(キュゥゥ)」
何気なく、二つ結びにしている髪をつかむ。
(あ.....あの子と同じ髪型にすれば、少しは近づけるかな)
私はプリントを後ろへ配るつもりで、斜め後ろにいる女の子へ目を向ける。
まだ、その手は重なり合っていた。
後ろにきれいにまとめられているお団子ヘアー、白い肌、ぱっちり二重、細い腕。
......敵わないや。
私は、目を伏せて机に視線を落とした。
これが君との関係のはじまり....
私の恋のはじまり
堕ちてはいけない恋のはじまり。
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